人工知能(AI)を使って何かできないのか――。官民を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の機運が高まる中、こうしたAI活用の要請を経営層から受けているIT部門は少なくない。AIの中でも過去のデータからパターンを見つけ出す「機械学習」は特に注目されている。

 一方で「予測の精度が上がらない」「そもそも機械学習に向かないプロジェクトだった」といった理由から、PoC(概念実証)だけで機械学習の活用が終わってしまうケースもある。そうした事態に陥らないように三菱ケミカルホールディングス(HD)が考案したのが「機械学習プロジェクトキャンバス」だ。

 「当社が直近の約2年間で手掛けた数十件の機械学習プロジェクト経験を基に、失敗しないために何をどう定義すべきかをまとめた」と、機械学習プロジェクトキャンバスを考案した三菱ケミカルHDの磯村哲デジタルトランスフォーメーションGr チーフコンサルタント/データサイエンティスト マテリアルズ・インフォマティクスCoE チームリーダーは言う。

 機械学習プロジェクトキャンバスは、実現したいビジネスモデルを可視化するための「ビジネスモデルキャンバス」になぞらえて作られたもの。「目的・目標」「成功の指標」「利用者」など12項目を、決めるべき事項として規定。各項目の記述内容や記述時の考慮点、記述例などを解説している。

三菱ケミカルホールディングスが考案した「機械学習プロジェクトキャンバス」
(出所:三菱ケミカルホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 機械学習プロジェクトキャンバスの使い方は簡単だ。12項目についてプロジェクトのステークホルダー全員が合意するように協議して決めるのである。三菱ケミカルHDであれば、化学の専門家、事業担当者、AIの専門家、工場の代表者といったステークホルダーが共同で各項目の内容を決める。

 例えば「目的・目標」の項目ならば「異常が起こる48時間前までに予兆検知に成功する」「目視チェックにかかる人間の工数を90%以上削減する」といったことを定義していく。「成功の指標」なら、「不良品を100%検知できるしきい値において、良品の偽陽性率を10%以内に抑える」などである。

 「12個の項目名だけを見ると、当然決めるべきことばかりに思えるかもしれない。しかし、実際に埋めようとするとなかなかできない。過去にはいくつかの項目が曖昧なままプロジェクトを進め、手戻りなどが発生したこともあった」と磯村データサイエンティストは言う。

三菱ケミカルホールディングスの磯村哲デジタルトランスフォーメーションGr チーフコンサルタント/データサイエンティスト マテリアルズ・インフォマティクスCoE チームリーダー

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら