1日当たり1790万人を運び、延べ7400キロメートルの線路を持つJR東日本が線路の「無人検査」に取り組んでいる。2018年度にスタートさせた国内初の試みは大きな事故も無く順調に適用路線を増やし、今後はAI(人工知能)や5G(第5世代移動体通信システム)を活用してさらに高度化させる考えだ。

 同社は線路を点検するための装置を在来線に取り付け、そのデータを解析して安全確保に生かす「無人モニタリングシステム」を運用している。2020年度末までに、首都圏のほとんどの路線と地方の主要路線に導入する方針だ。

 線路の点検業務で確認するポイントは2つ。「レールのゆがみ」と「材料の劣化」である。同システムの運用前はレールのゆがみについては、点検専用車両を年に4回走らせて確認していた。材料の劣化については、電車が運行していない深夜などに線路上を作業員が歩いて目視で点検していた。

線路での目視点検の様子
(出所:JR東日本)
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無人点検の取り組みは早10年

 点検回数を増やして安全性を高めると同時に、将来的な人手不足に備える――。課題解決に向け、JR東日本が同システムの開発に着手したのは2007年度に遡る。在来線の床下に取り付けているのは、レールのゆがみを測定する「軌道変位モニタリング装置」と材料の状態を撮影する「軌道材料モニタリング装置」である。どちらも導入に約1億円かかるという。

モニタリング装置は在来線の床下に取り付ける。軌道変位モニタリング装置は日立製作所、軌道材料モニタリング装置は川崎重工業が製作
(出所:JR東日本)
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 前者の軌道変位モニタリング装置はレールにレーザーを照射して、25センチメートルごとに線路のゆがみを自動測定する。測定データは携帯電話回線を通じて、点検担当部署に送る。基準値を超え、悪影響を与えかねない数値を計測したときは、同部署にメールで即座に通知する仕組みも備える。

 後者の軌道材料モニタリング装置の主な役割は線路の様子をカメラで撮影し記録するというものだ。在来線の最高速度である時速130キロメートルでも材料の状態を確認するのに十分な画像を撮れるという。線路を構成する材料のうち、レールと枕木を固定する金具と、レールとレールとをつなぐボルトの2つについて、その有無を自動で判定する。

線路の構成材料。レール締結装置やレール同士をつなぐボルトの有無を軌道材料モニタリング装置で自動判定する
(出所:JR東日本)
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 無人モニタリングシステムの導入により、山手線の徒歩による目視点検を週に1度から3カ月に1度まで減らせたという。徒歩による点検を12分の1に減らせた計算だ。

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