長さ1km以上のケーブルで冷却試験へ

 長さ約400mの超電導ケーブルによる超電導き電システムに関しては、ほぼ実用に耐える技術を確立したという。今後は長さ1km以上の超電導ケーブルの試験を宮崎県で実施する計画で、それが終われば「(費用対効果を含めた)実用化が見えてくる」(研究開発推進部担当部長の富田優氏)という。実際の応用時期に際しては「鉄道は線区ごとに列車本数をはじめとして状況が大きく異なるため、鉄道会社の要望への対応の時間が別に必要になる」(同氏)と述べるにとどめた。

 鉄道総研の検討によれば、直流電化で列車本数が比較的多い線区であれば、初期コストや冷凍機の運用コストを差し引いても省エネルギーなどのメリットを得られる見込みがある。「その損益分岐点が、ケーブル長では1~2km程度のところにある」(同氏)という。既存線区へ適用する場合は今回の実験と同様、現状のき電線に対して並列に超電導き電システムを追加するイメージという。「その方が安くすむ。ただし今後技術が十分確立して新設の線区に適用するとなれば、超電導き電システムだけで電力を供給する形態も考えられる」(同氏)という。

 電力の削減に加えて、変電所の数の削減、変電所の負荷平準化、ブレーキ時の回生失効の防止もメリットになる。いずれも電圧降下を抑えられるためだ。

 直流電化区間の変電所は通常は4~5kmごと、繁忙線区では2~3kmごとと数が多く、その理由の1つは電圧が降下する変電所間の中間地点でも十分な電圧を保つため。通常の1500V直流電化の場合、電圧降下を見込んで変電所では1600~1700Vと高めの電圧で送り出すが、いくらでも高くできるわけではなく、例えば高すぎるとブレーキ時に電車からの回生電流を流せなくなってしまう。超電導き電システムでは電圧降下なしで遠くまで電力を送れるため、変電所間の距離を大きく取れる。さらに、ある変電所の近くに電車が集中する状態でも、遠くの変電所から電力が届くため、特定の変電所に負荷が集中する事態がなくなる。

 回生失効は、電車がブレーキ時にモーターで運動エネルギーを電力(回生電力)に変換した際、その回生電力を近くにいる他の電車が力行状態で消費しないと、ブレーキの効きが弱くなる現象。超電導き電システムがあれば、電圧降下がないため遠く離れた電車にも回生電力が届き、回生失効が発生しにくくなる。

 鉄道総研は2018年に、同じ408m長の超電導ケーブルを用いた超電導き電システムについて、電圧降下がほぼなくなると確認する試験を実施した。今回の試験でも、システム切り離し試験において通常のき電線に2000A強の電流が戻った際に、切り離し前に見られなかった約25Vの電圧降下(日野方接続点の電圧より豊田方接続点の電圧が25V低い)が生じたのを観測した。

■変更履歴
公開当初、回生失効の説明でモーターを「逆回転させる」としたのは誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2019/08/20 20:20]