超電導ケーブル経由の電力で電車が走行

 試験は2019年7月に3種類を実施。JR東日本が終電後に臨時の回送電車を往復させ、下り線で運転士が実験目的に合わせて特別に加速したりブレーキをかけたりした。

 1番目の試験は、力行(加速)状態でエアセクションを越えて超電導によるき電区間に入り、その後ブレーキをかける試験。エアセクション通過直後に最大2258Aの電流が流れた(図5)。超電導ケーブルを含む超電導き電システムには突然大電流が通るが、温度や圧力に変化がないのを確認した。

 その後電車がブレーキをかけると、電車から発生した最大969Aの回生電流が逆向きに流れた。この回生電流はいったん日野変電所に戻り、豊田車両センター(車庫)へのき電線を経由して、同センターで待機する10本の電車(合計100両)の照明、空調を稼働させた。

図5 通電試験の結果
力行状態の電車がエアセクションを通過して超電導によるき電区間に入ると、急に大電流が流れる。増え方が3段の階段状になっているのは、10両編成にパンタグラフが3基あって、順次区間内に入るため。(出所:鉄道総合技術研究所)
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 2番目は、ブレーキ状態でエアセクションを通過し、その後加速する試験。電車が超電導によるき電区間に入ると、超電導き電システムには急に回生電流が逆向きに流れる。1番目の実験と同様、問題は生じなかったという。

 3番目は、超電導によるき電区間で電車が力行状態のときに、超電導き電システムを電気的に切り離す「システム切り離し試験」。超電導き電システムの不具合などを想定した試験であり、電車と超電導き電システム双方に異常がないかを確認する目的。切り離し直後に電流が既存き電線に瞬時に戻り、電車は不具合なく加速を続け、超電導き電システムにも変化はなかったと確認した(図6)。

図6 システム切り離し試験の結果
超電導によるき電区間に力行状態の電車が入ってすぐに、超電導き電システムを電気的に切り離す(遮断)。電流は瞬時に既存のき電線に切り替わった。(出所:鉄道総合技術研究所)
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 以上の実験は電流が大きく変化する過渡的な状態を人為的に作り出している。「超電導ケーブルは(変化のない)直流電流を抵抗なしで流せるが、(電流が常に変化する)交流では損失が発生する場合がある」(富田氏)ため、電流が大きく変化するときにシステムや車両に不具合が生じないか見るのが目的の1つだった。

 ケーブルを損傷する試験は実施していないが、ケーブル内部の真空層に空気が入っても、数時間は超電導状態を保てるため、その間にシステムの切り離しや原因調査、対応が可能になるとしている。液体窒素が気化した場合は弁を通して大気に逃がす。ケーブル内の液体窒素が小さな穴から漏れ出す事態になっても、やはり超電導状態でなくなるまでには時間があるという。