HUD(ヘッド・アップ・ディスプレー)世界首位の日本精機は、運転者の視点から10m先に映像を見せる新型HUDを開発した。従来比3倍以上を実現し、「世界最長」の表示距離となる可能性が高い。2020年に量産を始めるドイツ高級車メーカーの新型車で搭載する。2019年7月22日までに日経 xTECHの調べで分かった(図1)。

図1 日本精機が開発を進めてきた次世代HUDの表示イメージ
(出所:日本精機)
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 映像の表示距離を延ばしたことに加えて、表示画角を左右10度、上下4度以上に広げた。これにより、運転者が見るイラストの表示範囲は80インチに相当する。

 現時点では、日本精機が新型HUDを供給する企業名は分かっていない。ただ、日本精機が既にHUDで供給実績があるドイツ・ダイムラー(Daimler)、同BMW、同アウディ(Audi)のいずれかとなる見通し。旗艦セダンといった、車格が大きい車両に適用する可能性が高い。

 HUDは、ステアリングホイール前方のインストルメントパネル(インパネ)部分に組み込む車載機器だ。車速や経路案内といった情報を、虚像として運転者の視点の前方に映す。運転者は、センターメーターやカーナビに視線を移動させることなく、運転に必要な情報を得られる利点がある。

 安全性を向上できるとして、ドイツ高級車を中心に搭載が進む。例えば、ドイツの高速道路「アウトバーン」は原則、速度制限が無い。日本の高速道路をはるかに上回る速度で走行することが多く、センターメーターやカーナビに視線を落とした一瞬が危険につながる。運転中の視線移動を抑えられるHUDの価値を車両購入者が享受しやすい。

凹面鏡を高倍率に

 一般的に、映像の表示距離と運転中の焦点距離を近づけられれば、運転者の負担が減る。既存のHUDでは高性能モデルでも表示距離は3m前後にとどまり、大きく距離を延ばすためには、HUDの内部機構を抜本的に変える必要がある。

 HUDは、機構内部に映像の生成装置を搭載し、凹面鏡などで複数回反射して映像を拡大する。拡大した映像を、主にフロントウインドーを通して運転者に見せる仕組みだ。反射で確保した光路の長さや、凹面鏡での拡大率で表示距離が決まっていく。日本精機は、大きく拡大率が高い凹面鏡を独自開発するとともに、内部の部品構成や配置を刷新することで、既存モデルから表示距離を3倍以上延ばすことに成功した。

 ただ、凹面鏡を大きくしたり倍率を高めたりすると、集光による発熱が大きくなりやすい。HUDの温度上昇は、表示品質を狂わせる要因となる。日本精機は、熱が発生しにくいHUDの制御を確立し、熱を吸収する膜を追加するなどの対策を講じ、課題の解決を試みた。

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