1957年、旧ソ連によって人類初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられて以来、数多くの人工衛星が地球の周回軌道に上げられた。そして今、その負の遺産として注目を集めているのが、スペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミの放置だ。これらのゴミは、運用が終了した人工衛星や、打ち上げに失敗したロケットの残骸、多段ロケットの切り離し部分など。その数は、10センチ以上の大きさのもので、2万から3万個といわれる。民間企業が地球全体を覆うように数千~数万機の通信衛星を打ち上げる計画もあり、スペースデブリ問題は、宇宙空間の環境問題として、今後いっそう深刻化しそうだ。
 この状況を受け経済産業省が、スペースデブリ対策に乗り出した。興味深いのは、規制ではなく、市場原理を使うことで、スペースデブリ排出を抑制しようとしている点である。スペースデブリを出さないロケットや衛星を市場が評価する仕組みを導入し、評価された製品は保険が安くなったり、市場からの評価が高まったりする仕組みの導入を目指す。
 英国政府や世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)とともに、この抑制策を推進する経産省 製造産業局 宇宙産業室 室長補佐(統括)の國澤朋久氏に、現在の取り組みを聞いた。

スペースデブリを出さない人工衛星の格付けに取り組む経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 室長補佐(統括)の國澤朋久氏
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 スペースデブリの数は増加の一途をたどっている。特に2007年に中国が地上からのミサイルによって人工衛星破壊実験を行ったことで、スペースデブリの数が一気に増えた。「スペースデブリは、地球の衛星軌道上を秒速7、8kmという弾丸よりも速いスピードで回っている。これが当たれば、人工衛星などに甚大なダメージを与えることになる」と経産省の國澤氏は説明する。

 例えば、国際宇宙ステーション(ISS)にスペースデブリが直撃すれば、乗組員の人命に関わる事故につながりかねない。気象衛星や通信衛星に衝突し機能停止に陥れば、日常生活に支障をきたす。まだ、実質的な被害は出ていないが、JAXAが運用する衛星では、「毎日60件くらい、スペースデブリが近づいているというアラートがあり、そのうち年間3~5件くらいは、衛星の軌道をずらずなどしてかわしている状況」(國澤氏)だという。

 今後、スペースデブリ問題はいっそう深刻化しそうだ。大きな衛星を1つ打ち上げるのではなく、多数個の小さな人工衛星を打ち上げて一体的に運用する、衛星コンステレーションビジネスが盛んになってきているためである。アメリカでは米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)や米スペースX(SpaceX)などが数千から数万個の人工衛星を打ち上げ、全世界を網羅する高速インターネット網を作ろうとしている。「(これらの衛星にスペースデブリが衝突したり、これらが運用終了後スペースデブリになったりと)スペースデブリが引き起こすリスクの確率は、さらに高まっていくだろう」(國澤氏)。

 それなら、スペースデブリの排出について、国際的に規制すればよさそうだが、現実的には難しい。宇宙に関する問題を話し合う場として「国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)」があるが、「今後宇宙開発が必要な発展途上国と、技術を確立した先進国の立場の違いや、スペースデブリを出している国のトップ3がアメリカ、ロシア、中国ということがあり、なかなか合意に至れない」(國澤氏)。

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