2020年東京五輪の陸上投てき競技のフィールドを、トヨタ自動車が開発したロボットが走り回る。ハンマーや槍などの投てき物を回収・運搬する任務を担う。工場内で使うAGV(無人搬送車)向けに開発してきた技術を活用した。

 同社は2019年7月22日、陸上フィールド競技をサポートする自律走行ロボット「FSR(Field Support Robot)」を開発したと発表した(図1、2)。投てき物の落下地点まで運営スタッフに追従するように走行。スタッフはハンマーなどをロボットに載せるだけでよくなる。

図1 トヨタが開発した自律走行ロボット「FSR(Field Support Robot)」
(撮影:日経Automotive)
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図2 ハンマー投げなどの投てき競技で使う
(撮影:日経Automotive)
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 「運営スタッフの労力を低減したかった」。FSRを開発したトヨタの担当者は狙いを語る。ハンマーの質量は男子で7.26kgもある。現状は、落下地点からファウルゾーンまで運営スタッフが運び出し、回収用のラジコンカーを使って所定の位置まで投てき物を戻す(図3)。重量物を運ぶ労力に加えて、「数十m先を走るラジコンカーの操作が意外と難しい」(同担当者)という。

図3 2012年のロンドン五輪では「MINI」のラジコンカーが活躍
(出所:BMW)
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 FSRを使えば、スタッフが投てき物を運ぶ距離を2m程度まで縮められる。投てき物を載せたFSRは、決められた場所まで自律走行で運搬するため、ラジコンカーのように操作する人はいらない。走行経路に人や障害物があれば、自動で回避する。

 東京五輪では6台のFSRを用意する予定。1回の競技中は2台使う。搭載するリチウムイオン電池の容量は760Whで、1回の充電で20km程度走行できる。市販の交換式のリチウムイオン電池パックを6個搭載した。

 自律走行を実現するために、トヨタはFSRに3個のカメラモジュールと1個のLIDAR(レーザーレーダー)を搭載した(図4)。スタッフへの追従走行や障害物の回避にはカメラを使う。カメラモジュールには、可視光カメラに加えて赤外線ステレオカメラを内蔵する。可視光カメラで物体の存在を認識し、赤外線ステレオカメラで物体との距離を把握する。

図4 3個のカメラモジュールと1個のLIDAR
(撮影:日経Automotive)
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 物体認識には、トヨタが開発したAI(人工知能)を用いた。FSRは、特定の人物に追従するのではなく、最も近くにいる人を追いかける仕組みにした。7m以内にいる人の存在を認識し、4mほどまで近づいてきた人を「追従する対象としてロックオンする」(同担当者)。ロックオンすると、FSRから対象者に近づいて2mの距離を保つように自律走行する。

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