企業のシステム開発にアジャイル開発手法を用いるケースが増えている。ビジネスの変化に合わせて、ユーザーの意見を素早く反映させ、使い勝手の良いシステムを構築するのに有用だからだ。この潮流が官公庁が集まる霞が関にもいよいよ押し寄せてきた。

 先駆けとなったのが国の歳入歳出といった決算や政府関係機関の会計などを検査する会計検査院だ。2019年3月31日に「総合検索システム」をアジャイル開発の手法と超高速開発ツールを使って再構築した。

 同システムは、各府省などを検査した検査報告案を基にその内容を説明する資料や案件名、金額などを登録する機能と、登録されたデータを検索する機能を備える。会計検査院の業務に欠かせない基幹システムの1つと言える。

総合検索システムの画面
(出所:会計検査院)
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 再構築前の旧システムは検索機能しか備えておらず、登録はExcelを利用していた。Excelファイルを共有していたため変更管理の機能もなく、案件の名前が変わると関連する資料を手作業で書き換えなければならなかったという。

 会計検査院でシステム再構築のプロジェクトマネジャーを務めた事務総長官房情報システム調査官の貝瀬智副長は「旧システムは検索機能が旧態依然で使いにくい面があり、利用部門と運用保守部門の負担が大きかった」と話す。そこで、システムのリプレースに伴い、新たに登録機能を追加し、検索機能を強化することにした。

会計検査院の貝瀬智副長
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現場から「アジャイル」の声が上がる

 システム再構築に当たり、IT部門が重視したのは「とにかく利用部門や運用保守部門の全員が便利に使えるシステム」(貝瀬副長)だった。そこで、利用部門が必要としている機能を把握するため、システムの利用者である約1200人にアンケート調査を行った。アンケートには「曖昧なキーワードでも検索できる機能が欲しい」「案件を登録する際にタグでカテゴライズしたい」「検索履歴を表示してほしい」といった声が寄せられた。

 これらの結果を踏まえて、IT部門はシステム再構築に向けた入札募集を行った。入札期間は2018年9~10月。調達条件には、ウオーターフォール型の開発に加えて、会計検査院として初となる「アジャイル開発」の文言を記載した。これまで慣れ親しんだウオーターフォール型とアジャイル開発のどちらでも入札できるようにしたわけだ。

 一般に基幹システムのリプレース案件は、最初から全ての仕様を決定できるケースが多い。こうした場合は、アジャイル開発よりもウオーターフォール型のほうが向いていると言える。しかし、会計検査院はあえて「アジャイル開発」を加えた。

 この理由について貝瀬副長は「現場のIT担当者からの要望があったため」と説明する。会計検査院のIT担当者は、総務省のモデリング分科会が開催した「超高速開発Liveモデリング」のイベントに参加したことがあった。このイベントで、超高速開発ツールとアジャイル開発の手法を活用し、短時間にシステムを構築していくさまを見学したIT担当者が「アジャイル開発をしたい」と貝瀬副長に直訴したのだ。

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