2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育に向け、各社が教材や授業の提供で競い始めている。村田製作所は2019年7月9日、体験型のプログラミング教室「動け!! せんせいロボット」を東京都渋谷区立鳩森小学校で開催し、授業の様子を報道機関向けに公開した。

この道10年、授業を受けた人が入社した実績も

 同社は2006年から学校向けの出張授業に取り組んでいる。自転車型ロボット「ムラタセイサク君」の開発エピソードを中心に、ものづくりの楽しさや、エンジニアが普段どのような課題にチャレンジしているかなどを、映像とディスカッションで伝えてきた。

 理科や科学への興味関心と、ものづくりに対する憧れなどを醸成することを狙う内容で、出張授業がきっかけで同社に入社した従業員もいるという。教育現場からもキャリア教育につながる取り組みとして評価されているとする。

 従来の出張授業は座学だったが、2019年5月に始めた「動け!! せんせいロボット」はインタラクティブな体験型授業だ。「動かすってむずかしい!でも、動かすって楽しい!」をキャッチフレーズに、タブレットを使ってロボットへの命令をプログラミングして実行する。ユニークなのは、人間が段ボールをかぶってロボットにふんして、命令を実行する点だ。

“起動“した「せんせいロボット」。ロボット役は村田製作所・東京支社の従業員が務めた
(撮影:森元 美稀、以下同じ)
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あえて本物のロボットは使わない

 ロボットの開発も手掛ける同社がなぜ人間をロボット役にするのか。広報部の吉川浩一氏は「プログラミングに初めて触れる児童にも、なるべくハードルを下げた授業にしたかった」と説明する。

 「授業では、ロボットというデジタルで無機質なものを動かすことが多いので、あえて人間をロボット役にした。シーケンス(順序)を作って失敗したとき、ロボットではさっと直してすぐにリトライできるため、なかなか深い思考に至らない。人間を動かしてコミュニケーションすることで、失敗したときのつらさや申し訳なさ、できたときの喜びが倍増することを期待している」(吉川氏)。人に何度もやらせるのは申し訳ないという「気遣い」を引き出して、より真剣に、より深く課題に向き合わせようというわけだ。

 企画当初、ロボット役は教員に担ってもらう想定だった。しかし、教育現場からは教員がロボットとして段ボールをかぶってしまうと、児童に目が届かなくなるという意見が挙がった。そこで同社の従業員がロボット役を担い、授業を運営することにした。

 授業を通じて、従業員の人間性を成長させるという別の狙いも生まれた。村田製作所はCS(顧客満足)とES(従業員満足)を共に高める価値観を大切にしており、ESが高くなければCSも高められないとする。

ロボットへの指示を表示するスマートフォンと、児童がプログラミングするタブレット
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 渋谷区は小学校の授業にタブレットを導入しており、1人1台貸与している。そのためか、今回の授業で2~3人が一緒にプログラミングしている様子を見ると、ほとんど操作説明をしなくても取り組めていた。プログラミングのアプリケーションが直感的に操作できるように作られていることもあるだろうが、村田製作所によると教員向けに実施した体験授業では、操作に慣れるまでに時間がかかったそうだ。

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