EV(電気自動車)に搭載されている蓄電池への充電を遅延させることによるDR(デマンドレスポンス)や蓄電池の余剰分を電力網に逆潮流することによる系統安定化の対価を電力事業者から得るV2G(Vehicle to Grid)の実証プロジェクトが各国で相次いでおり、一部は実証段階から実ビジネス段階に移行してきた。電力会社、自動車メーカー、充電インフラのプロバイダーが相次いで参入し、新しいビジネスモデルを志向している。

 EVが普及・拡大する中で、送配電事業者や発電事業者などの電力会社にとって、所有者が一斉に充電すると需要ピークが立って、それに対応するための送配電網や発電所の追加投資が必要になる課題が深刻化してきた。そこで、今からその対策を、EV所有者にとってもメリットがある形で立てておこうという実証プロジェクトが活発化している。

 中でも米国カリフォルニア州では、自動車メーカーに対して販売台数の一定割合をEVなど排ガスゼロのZEV(Zero Emission Vehicle)にするよう義務付けるZEV規制が導入されていることから、EVの普及が進んでいる。

 そこで、同州の3大電力会社であるPG&E(Pacific Gas and Electric)、SCE(Southern California Edison)、SDG&E(San Diego Gas & Electric)はいずれも、EVの充電時間を需要のピーク時間帯からずらす目的でDRに乗り出している。

PG&EとBMW、EV充電をDRに活用、参加EV所有者にはインセンティブ

 例えば、サンフランシスコ市周辺に電力を供給するPG&Eは独BMWと提携して、EV所有者100人に対してDRサービスを提供する実証プロジェクトを実施した。

 EV所有者には参加時に1000ドルが支払われ、オプトアウトの頻度などのDR実績によって最大で540ドルの報奨金をギフトカードで支払う。インセンティブは合計で、最大1540ドルになる。

 PG&Eは、100kWのDRを実現するために定置用蓄電池も併用したが、実証期間中におけるDRイベントの発令は200回を超え、EVからの寄与は「満足できるレベル」と評価している(図1)。多くのEV所有者は充電を夜中の23~2時にずらしたという。

図1●DR目標(100kW)に対するEV充電遅延と定置型蓄電池の寄与率
オレンジ色がEV充電遅延の寄与率、薄黄色が蓄電池からの寄与率。EV充電遅延の寄与率は平均20%(出所:PG&E)
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 今後、EV数が増えていけば、EVだけで100kWのDRを達成するも可能だとPG&Eはみている。電力規制当局のCalifornia Energy Commissionは、系統安定化に役立つとして補助金を支給し、参加するEVを250台以上に拡大した第2フェーズの実証プロジェクトを2017年に開始した。

 PG&Eは将来的に、EV所有者に対する最適なサービスを実ビジネスとして提供していき、BMWはEVの蓄電池の経済性を上げていくことで普及を促進する計画である。

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