GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)に代表される米巨大IT企業に対し、「政府は規制を強めるべきだ」との声が高まっている。

 米フェイスブックから最大8700万人分の個人情報が漏洩して政治広告などに不正利用された事件を巡り、米連邦取引委員会(FTC)は2019年7月12日までに約50億ドル(約5400億円)の制裁金を科す和解案を決議した。

 さらに同16日には、巨大IT企業による市場の独占が健全な競争を阻害しているとして、米下院司法委員会の反トラスト小委員会の公聴会にGAFAなどの幹部が呼び出された。

 「CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー」「Remix」などの著作でインターネット産業と法規制の在り方を論じた米ハーバード大学のローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)教授は2019年6月下旬、デジタルガレージ主催のイベント「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2019 TOKYO」に登壇するため来日。日経 xTECHの単独インタビューに応じ、「今こそ、巨大IT企業の行動を律する新たな法規制が求められている」と語った。

デジタルガレージ主催のイベント「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2019 TOKYO」に登壇したハーバード大学のローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)教授
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 巨大IT企業の台頭を前に、国は健全な競争環境の実現に向けてどのような規制を設けるべきか。レッシグ教授に聞いた。

企業のインセンティブと公共の利益との関係を理解せよ

 法による規制の是非を考える上で最初のステップは「企業や産業のビジネスモデルやインセンティブ(行動を変化させる要因)と、公共の利益との関係を正しく認識することだ」とレッシグ教授は語る。

 政府が適切な規制を設ければ、企業のインセンティブを変えて公共の利益と一致させられる――。それが同氏の基本的な考え方だ。

 例えばインターネット接続事業者(ISP)に対し映画コンテンツなどとのセット販売を禁ずる法規制を設ければ、ISPにとって「最も速く、最も安い接続サービスを提供すること」へのインセンティブが高まる。それが市場シェアを高める唯一かつ最良の方法だからだ。そしてこのインセンティブは公共の利益と合致する。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)や米グーグルのスンダー・ピチャイCEOは2019年春に開催した自社イベントの基調講演で、プライバシー保護の姿勢を強く打ち出した。

 だが2人の声明に対するレッシグ教授の視線は厳しい。「彼らの声明は2社の利益の構造を正しく記述していない。(広告収入が収益の大半を占める)フェイスブックやグーグルにとってプライバシーを尊重するビジネス上の利益は相対的に大きくない」(レッシグ教授)

 2人のCEOが示した「企業による自主的な規制」に頼る手法は、その企業のビジネスモデルと公共の利益が矛盾している場合、いずれ機能しなくなるという。「我々はこの点を深く認識するとともに、規制当局にも同様の認識と、規制に必要な能力を持たせる必要がある」(レッシグ教授)

 レッシグ教授は喫緊の課題として、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などに出稿される政治広告を挙げる。「市民が政治について議論するプラットフォーム上で広告枠を販売するビジネスモデルは、非理性的、感情的な議論の喚起を狙う政治勢力に悪用されやすい。民主主義の存立はこうした非理性(irrationality)を避けられるかにかかっている」

 実際、いくつかの国で選挙期間中にフェイスブックなどへの政治広告の出稿を制限する試みが広がっているという。政治広告をオフにすることでニュースフィードにおけるユーザーの活動が過度に感情的でない、理性的なものになれば、その試みには意味があったことになる。「政治広告に関する問題の解決法を見いだすには、こうした実験を繰り返す必要があるだろう。企業に対策を委ねるレッセ・フェール(完全自由放任)の解決法は決して機能しない」(レッシグ教授)

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