ブームに乗ってさまざまな用途開発が進む人工知能(AI)。だが、ユーザーから見ると、本当に業務に役立つのか、採算が取れるのか、AI開発企業間の差異は何なのかといった疑問がある。どこまでAIに期待でき、どこからそれができないのか。三菱電機でAIの研究開発を手掛ける同社情報技術総合研究所所長の楠和浩氏と、同研究所知能情報処理技術部部長の田崎裕久氏にそれらの疑問をぶつけた。その後編。

(前編で)AIを導入する際のコストについては既に聞いた。では、時間はどうか。ユーザーがAIを使えるまでにどれくらいの時間が必要なのか、目安はあるか。

楠氏:一概には言えない。時間において一番の問題は、意味のあるデータを取得できているか否かだ。例えば、機械が壊れる前に故障を知らせる「予兆検知」のAIを導入する場合、予兆を捉えているデータを見つけ出す必要がある。温度か、圧力か、時間か、いろいろと考えられる物理量の中から予兆検知に寄与するデータを選び出すのだ。そして当然、それらのデータを取得するセンサーを用意しなければならない。これらのデータさえ決まれば、後はAIが自動で処理することが可能だ。

全く的外れなデータを取得しているケースもあると?

楠氏:残念ながらその通りだ。

その場合はどうするのか。

楠氏:ユーザーが試行錯誤するか、ユーザーが我々のようなAI開発企業と相談して見つけ出す。当社の場合、AIだけではなく、機械や機器を開発しているので、それらのハードウエアの知見を持っている。そのため、「このデータが予兆と相関があるのではないか」とか、「この辺りのデータを取ってみたらどうか」とかいった提案ができる。

 つまり、当社のようなメーカーは機械や機器のメカニズムや動きまでよく理解しているから、より的確なソリューションができる。これに対し、IT企業はユーザーの機械や機器の中身についてはブラックボックスだから、ユーザーからどのデータを取ったらよいかと聞かれても、答えるのは難しいだろう。不可能とは言わないが、IT企業にとって、AIと現場の機械や機器との間には分厚い壁があると思う。

つまり、メーカーとIT企業とでは、メーカーの方が「もの」を理解している分、優れたAIを作れるということか。

楠氏:機械や機器に依存したAIという意味では「イエス」だ。だが、AIの使い方として、例えばマーケット予測に使用する場合では、また別の話となる。ハードウエアを動かす、分析する、評価するといった領域のAIでは、圧倒的にメーカーの方に軍配が上がると思う。

 なぜなら、メーカーは販売した機械や機器でたくさん痛い目に遭っているからだ。市場で故障したり壊れたりして顧客から叱られ、その都度改善してきた。こうした手痛い失敗が製品の設計・開発力を高めるだけではなく、AIの開発力の向上にもつながっている。

 つまり、AIを開発する際に、機械や機器、生産ラインをベースにAIを開発できるのがメーカーの強みだ。

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三菱電機情報技術総合研究所所長の楠和浩氏(左)、同研究所知能情報処理技術部部長の田崎裕久氏(右)
同研究所は三菱電機でAIを研究開発している。(写真:日経 xTECH)

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