「キャッシュレス化に水を差しかねない」。ある地方銀行大手のデジタル担当者は、2019年7月4日に明るみに出た「7pay」の不正アクセス事件に懸念を示す。鳴り物入りの新サービスで起きたトラブルに、スマホ決済が揺れている。

 だが逆風はこれだけではない。水面下では、銀行とスマホ決済事業者間の不協和音が続く。渦中にあるのは銀行界の雄、三菱UFJ銀行とゆうちょ銀行だ。

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 スマホ決済には、登録した銀行口座から残高をチャージして利用するタイプのものがある。ところが三菱UFJ銀行とゆうちょ銀行については、登録できない決済アプリが少なくない。特に、後発で銀行接続を始めた決済アプリで顕著だ。例えば「PayPay」や「Origami Pay」は三菱UFJ銀行、「メルペイ」はゆうちょ銀行からのチャージに対応していない。どのアプリも他のメガバンクとは接続を終えている。なぜ2行からのチャージができないのか。

不正対策やアンチ・マネーロンダリング対策を重視

 銀行口座から決済アプリへのチャージは、銀行が手掛ける「リアルタイム口座振替」というサービスで実現している。ユーザーが決済アプリ上でチャージボタンをタップすると、登録済みのユーザー口座からスマホ決済事業者の法人口座にリアルタイムで資金が移動。移動させた金額分が、決済アプリ上の残高として反映される。

 リアルタイム口座振替サービスの提供可否や利用料を決めるのは銀行だ。特定の決済アプリにおいて三菱UFJ銀行やゆうちょ銀行が登録できない理由は、両行が現時点で同サービスを提供しないという判断を下しているからだ。

 事情は両行で異なる。三菱UFJ銀行がリアルタイム口座振替サービスの提供に慎重なのは、スマホ決済事業者による不正対策やアンチ・マネーロンダリング(AML)対策を重視しているからだ。「業界内で最も厳しい。グループ会社であってもAMLの強化を促しており、妥協できない部分なのだろう」と、スマホ決済関係者は語る。同行は接続先事業者における不正検知の仕組みや体制、有事の際のプロセスにも目を配っているとされる。同行自身も、「個別の案件ごとに、ビジネス的に判断しているが、AML対策が非常に重視している観点であるのは確か」(三菱UFJ銀行)と認める。

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