東京都渋谷区内にある3書店は2019年7月30日から、万引き犯の顔画像データなどを互いに共有し、顔認証カメラで入店を検知して再度の被害を防ぐ「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」を始める。

記者説明会の様子
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 同プロジェクトに参加する書店は啓文堂書店 渋谷店、大盛堂書店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店。この3店舗と、流通業や警備業などが参画する全国万引犯罪防止機構の関係者がプロジェクトを運営する。

 これまで同じ系列の店舗同士で顔画像データを共有する試みはあったが、異なる系列店同士でデータを共有し、万引きの防止につなげる試みは国内初とみられる。7月30日までの1カ月ほどを周知期間とし、店内やWebサイトにプロジェクトの概要を掲示する。

 3書店と全国万引犯罪防止機構は2019年6月28日に記者説明会を開き、同プロジェクトの概要を説明した。登壇した書店経営者は「やっとここまできたかという思い」「ここで成果を出すことが、他の書店にも勇気を与えるのでは」などプロジェクトへの期待を語った。

 一般的な書店における万引きなどによる在庫ロス率は平均1~2%、全国の書店の被害総額は年間約200億円とされる。営業利益が1%を切ることも多い書店の運営において、万引きの被害は大きな負担になっている。

 警察庁の犯罪統計によると15年前は万引き犯の4割が少年、2割が高齢者だったのが、近年は4割が高齢者、2割が少年と比率が逆転。フリマアプリの普及に伴い、売却による利益を狙った万引き被害も相次いでいるという。

 3書店はグローリーの顔認証システムを使い、対象となる人物の来店を防犯カメラで検知。スマートフォンの通知や音、光などで店員に周知し、警戒や声かけなどの対応を取る。来店者に万引きの意図があるか否かは明確でないため「犯人扱いしたと受け止められるような対応がないよう配慮」(同プロジェクトの配布資料)するとしている。

 ひかり総合法律事務所の板倉陽一郎弁護士など有識者4人からなる運用検証委員会を設け、運営状況を随時検証する。

個人情報保護法のハードルは越えられたのか

 「微妙なデータを扱うことになる。個人情報保護法の制約の中で何ができるか、膨大な検討を要した」――警察庁OBで全国万引犯罪防止機構理事長の竹花豊氏はこう語る。顔画像や特徴量などのデータは個人情報保護法が定める個人データに当たり、組織を越えた共有には法的なハードルがあるためだ。

全国万引犯罪防止機構の竹花豊理事長
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 今回のプロジェクトは個人情報保護法第23条第5項第3号が規定する「共同利用」の枠組みを採用することで法的な問題をクリアしたと主張する。

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