2019年6月7日にトヨタ自動車(以下、トヨタ)は「EVの普及を目指して」と題した電動化戦略を発表。「電動車を世界で550万台以上販売し、そのうち電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)を100万台以上とする」という目標達成の時期を、2030年から2025年に早めた。元トヨタのエンジン技術者で愛知工業大学客員教授の藤村俊夫氏は、この主因をハイブリッド車(HEV)の拡販と見る。そして、トヨタのEV開発について見るべきは、超小型EVへの参入だと語る。

前編において、トヨタの電動化戦略に関する計画の5年前倒しを支える主因はHEVであり、同社はEVには思ったほど力を入れていないという見立てを聞いた。世間が騒ぐほどEVは売れないということか。

藤村 俊夫氏
愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任(写真:都築雅人)

藤村氏:ガソリンエンジン車の代替である現行のEVについては、そうだ。世界の主要都市における深刻な大気汚染対策の一環で売れることはあっても、都市部以外に広くEVが売れることはないだろう。

 特に大型のEVに関しては「市場投入しても仕方がない」というのがトヨタの本音のはずだ。大型車に向くのはFCVの方だと同社は考えている。だからこそ、例えばFCVのショーファーカー(高級車)「LEXUS LF-FC」を開発したのだ。FCVの燃料と燃料タンクを合わせた質量は、ガソリンタンクのそれと大差ない。これに対し、現行の大型EVはいわば「電池輸送車」だ。仮に、車両重量(質量)をガソリンエンジン車と等しくするには、現行の電池のエネルギー密度(180Wh/kg)を20倍以上に高める必要がある。全固体電池が実用化されても、エネルギー密度は3倍の500Wh/kg程度にとどまる。依然として、現行のガソリンエンジン車との乖離(かいり)は大きい。

 技術的な合理性を踏まえると、大型SUV(多目的スポーツ車)のEVの「現実解」は、HEVでありPHEVである。このことは前編でも述べた通りだ。

高級車のFCV「LEXUS LF-FC」
次世代のフラッグシップカーをイメージしたコンセプトカー。トヨタが2015年の東京モーターショーで公開した。(出所:トヨタ)
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