「2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカード(個人番号カード)を保有することを想定」――。政府がカード普及の方針に盛り込んだ冒頭の一文が自治体関係者の間に波紋を広げている。事実上カードの「取得義務化」を進めると捉えられるからだ。

 冒頭の一文を盛り込んだのは「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」。2019年6月4日に菅義偉内閣官房長官が議長を務めるデジタル・ガバメント閣僚会議が公表した。2019年8月をめどに具体的な工程表を示すとしている。

 実質的な取得義務化を見据えた動きもある。市町村から委託を受けてカードを発行する地方公共団体システム機構(J-LIS)は2019年6月12日、「個人番号カード用ICカード製造業務等」として3社に合計5500万枚の入札公告を出した。

 5500万枚という数字はこれまで交付した枚数の3倍以上だ。マイナンバーカードの交付枚数は2019年5月末時点で約1703万枚。人口に対する交付枚数率は約13.3%にとどまる。J-LISはマイナンバー制度がスタートした2015年度に1500万枚の入札を実施し、その後現在までに計約2910万枚を発注済み。1200万枚ほどが余っている状況だ。

 それにもかかわらずさらに5500万枚もの入札をするということは発注済のカード約2910万枚と合わせて約8410万枚、人口約1億2000万人に対して交付枚数率が一気に7割近くまで増えると踏んでいるからだ。J-LISはデジタル・ガバメント閣僚会議の方針を受けて今後カードが不足する恐れがあると見込み、「納品が始まるまで半年ほどかかるうえ、一度ではなく毎月末に一定枚数を納品するため今回の入札をした」と説明する。

行政サービスなどのデジタル化に不可欠

 マイナンバーカードは裏面に記載されたマイナンバーとは無関係に、顔写真付きの身分証として本人確認に使える。また、カード内蔵ICチップに搭載した「公的個人認証サービス(JPKI)」を使えばマイナンバーそのものとは結び付けずにインターネットで本人確認ができる。

 そのため政府はカードをネット上のなりすましなどを防ぐための「安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤」と位置付ける。行政サービスなどをデジタル化して誰もがネットで手続きできるようにするにはカードの普及が不可欠だとして様々な活用策を盛り込んだ。

 活用策の1つが自治体ポイントだ。2019年10月の消費税率引き上げに伴う消費の落ち込みを防ぐ策として2020年度から導入。これにマイナンバーカードを活用する。

政府が公表したマイナンバーカード普及の方針
(出所:デジタル・ガバメント閣僚会議などの資料を基に日経 xTECH作成)
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 自治体ポイントは総務省が現在、クレジットカード会社や航空会社、電力会社などのポイントやマイルを「地域経済応援ポイント」にまとめたり、一部の自治体が発行している「自治体ポイント」に変換して地域特産品の購入などに使えたりする事業を進めている。

 同方針は自治体ポイントの利用環境やポイントの使途、有効期限などの検討を加速して、早期のカード申込者に対してプレミアム率の割り増しを検討するとしている。

 また2020年10月から納税手続きのデジタル化も進める。年末調整や確定申告に必要な保険料控除証明書や住宅ローン残高証明書、医療費、寄付金受領証明書などの情報について、マイナンバー制度の個人向けポータルサイトであるマイナポータルを通じて一括して自動入力できる仕組みを構築するという。

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