2019年6月20日(米国時間)に米ニューヨーク証券取引所に株式を上場した米スラック・テクノロジーズ(Slack Technologies)を、市場は極めて高く評価した。終値は38.62ドルで事前についた参考価格の26ドルを50%近く上回り、株式時価総額は195億ドル(約2兆800億円)に達した。

 同社の2019年1月期の売上高は4億55万2000ドルであり、195億ドルという時価総額は年間売上高の48倍にも達する。電子メールを置き換える業務用メッセージングサービスとして人気を集める「Slack」を提供する同社は、赤字決算のまま株式を上場した。だが、市場はSlackの成長性の高さや、一度つかんだ顧客を離さずに“育てる”Slackの「粘着性」の高さを評価したようだ。

 同社が公表した上場目論見書によれば、同社の売上高成長率は2019年1月期が前年同期比81.6%増、2018年1月期が同109.7%増と驚異的ともいえるペースで伸びている。2019年1月期は1億3806万2000ドルの純損失が発生しているが、その金額は2017年1月期からほぼ横ばいである。

米スラック・テクノロジーズの決算(カッコ内は前年同期比増減率、▲はマイナス)
2017年1月期2018年1月期2019年1月期
売上高1億515万3000ドル(-)2億2054万4000ドル(109.7%)4億55万2000ドル(81.6%)
売上原価1551万7000ドル(-)2636万4000ドル(69.9%)5130万1000ドル(94.5%)
売上総利益8963万6000ドル(-)1億9418万ドル(116.6%)3億4925万1000ドル(79.8%)
研究開発費9667万8000ドル(-)1億4135万ドル(46.2%)1億5753万8000ドル(11.4%)
販売費1億400万6000ドル(-)1億4018万8000ドル(34.7%)2億3319万1000ドル(66.3%)
管理費3745万5000ドル(-)5649万3000ドル(50.8%)1億1273万ドル(99.5%)
営業利益▲1億4850万3000ドル(-)▲1億4385万1000ドル(-)▲1億5420万8000ドル(-)
純利益▲1億4690万9000ドル(-)▲1億4006万3000ドル(-)▲1億3890万2000ドル(-)

 同社は売上高が1億ドル強だった2017年1月期に9600万ドルを研究開発費(R&D費)につぎ込むという、研究開発先行企業だった。R&D費が売上高に占める割合は2017年1月期には91%にも達した。しかしその後はR&D費の上昇カーブより、売上高が急ピッチで増えた。その結果、R&D費が売上高に占める割合は2019年1月期には39%にまで低下している。

 売上高の伸び率はR&D費の伸び率だけでなく、販売費(セールス&マーケティング費)の伸び率も大きく上回っている。同社は直近で赤字決算だが、今後もこのペースで売上高が成長すれば早期に黒字化する――。株式市場はそう判断して、スラック・テクノロジーズに高値をつけたもようだ。

有料ユーザーは8万8000社

 上場目論見書によればSlackのユーザー数は2019年1月の時点で1000万人。有料ユーザーは2017年1月時点の3万7000社が2018年1月には59%増の5万9000社、2019年1月期には49%増の8万8000社にまで増えている。うちSlackに年間10万ドル(1000万円以上)を支払う有料ユーザーは2019年1月の時点で575社あるという。

 新規ユーザー獲得が順調に進んでいるSlackだが、好調さの要因はそれだけではない。一度つかんだ顧客を離さないだけでなく、既存顧客から毎年より多くの売り上げを獲得する「粘着性」の高さがSlack最大の強みだといえる。

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