公正取引委員会は、共同研究先や取引先の知的財産権などを搾取する事例を調査し、結果を明らかにした。多くのメーカーが「オープンイノベーション」を掲げる中、かけ声とは裏腹な「名ばかり共同研究」のあくどい事例が多く見つかった。知財の獲得は技術開発の根幹で、搾取を放置すればその進展を妨げる。

 1万6000社弱が公取委に書面で回答し、知財やノウハウの開示を強要される事例などが726件あった。公取委にはかねて、「優越的地位にある事業者が取引先の製造業者からノウハウや知財を不当に吸い上げている」といった複数の指摘があった。その指摘を裏付けた形である。

 2019年6月14日に報告書を公表した。独占禁止法や下請法の違反行為につながる可能性があり、公取委は経済産業省や特許庁と連携して、「違反行為に厳正に対処する」とした。

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公正取引委員会による報告書の概要。(出所:公正取引委員会)

 調査結果を見ると、大企業による下請け取引先への搾取事例が多いことに加えて、ベンチャー企業の苦悩が見て取れた。意外なのは、大企業同士の取引にも多くの搾取事例があることだ。市場の寡占化が進んでいる分野では、大手といえども取引先の要求にあらがえない実態が透ける。

 ある化学系ベンチャー企業は、「取引先がNDA(秘密保持契約)の中にさらっと(分かりにくい形で)ノウハウの開示条項を入れてくることがある。ベンチャー企業は技術が全てであり、世の中には大企業にノウハウを吸い取られている中小企業も多いと思う」と回答し、調査結果は氷山の一角であるとの見方を示した。

めっき加工のノウハウを搾取して内製化

 製造業者641社が726件の問題事例を報告した。最も多いのが、製品を納めるだけの契約にもかかわらず、設計図面などのノウハウや知財を無償で提供させられた事例(254件)である。搾取した情報を用いて内製化したり、他の価格の安い事業者に切り替えたりするのに活用されていた。

 例えば金属製品メーカーが大口の取引先からめっき加工を受託したところ、自社の特殊なめっき加工を再現できるほどの情報(営業秘密として管理しているpH値、粒度、温度、時間、電気量などの詳細なノウハウ)を無償でQC(品質管理)工程表に記載させられた。しかも取引先は、搾取した情報を基に内製化した。

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