PoC(Proof of Concept、概念実証)を繰り返すのだが、その先に進まない――。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しようとする企業の多くは壁に突き当たっているのが現状だ。

 そんななか、不動産大手の三井不動産の取り組みは注目に値する。取り組みの名称は「デジタルラボ」。デジタル人材の育成とデジタル技術を活用した新サービスの創出、事業化を同時に実現するための、1年がかりの社内イベントである。

 2018年度に試験的に第1期を実施。効果があったと判断し、2019年5月から内容をより進化させて第2期を開始したところだ。

 デジタルラボの概要はこうだ。社内外の様々な部署から合計20人の若手を集め、5人1組で4チームを作る。チームにはIT部員と事業部門の社員のほか、システム開発の協力会社であるNTTデータの若手エンジニアをバランスよく組み合わせ、混成チームにした。立場の違う人材を集めることで、斬新なアイデアが出てくることを狙った。

 参加者は2週間に1度の頻度で集まる。各チームにデザイン思考の講義やワークショップで勉強させつつ、新サービスのアイデアを考えさせた。チームごとにPoCまで実施し、最終的に審査会でPoCの結果を役員や事業部長に提案した。

三井不動産の新サービス創出法「デジタルラボ」の概要
(三井不動産の資料を基に日経 xTECH作成)
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 各チームが企画したアイデアを実際にサービス化するかどうかについては「往年のテレビ番組、スター誕生のように決めた」とデジタルラボを企画した古田貴執行役員ITイノベーション部長は説明する。審査員となる役員や事業部長は「○(採用)」「△(要検討)」「×(不採用)」の3種類で各チームのアイデアを審査した。事業部長が「○」を出した場合、その事業部で責任を持ってサービス化を進める。

 「スター誕生!(スタ誕)」は1970~80年代に放送されたオーディション番組。歌手になりたい一般参加者が芸能プロダクションやレコード会社の審査員の前で歌い、自社からデビューさせたいと考えた審査員はプラカードを上げてスカウトする。

 デジタルラボの優れている点は、単に新サービスのアイデアを募るのではなく、デジタル人材の研修を兼ねている点だ。外部有識者を招き、デザイン思考や顧客インタビュー手法など新サービスを考案するための方法論の講義を参加者に受けさせる。これにより、実効性の高いアイデアを出しやすくしている。

 もう1つ、アイデアの審査に「スタ誕方式」を採用していることもポイントだ。「◯」を上げた事業部長は自部門でのサービス化をその場でコミットしたことになるため、「PoCから先に進まない」といった状況になりにくい。

テナント企業を巻き込んでPoC

 第1期にデビュー(サービス化)が決まったのは、4チーム中1チームだった。そのチームが提案したのは「10分カウンター」というアイデアである。三井不動産が運営する「ららぽーと」などショッピングセンター向けのサービスだ。

 ららぽーとのテナントであり、リクルートが運営している住居に関する相談窓口「スーモカウンター」と共同でPoCを実施した。

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