ホンダが開発中のガソリンエンジンの試作機で、最高熱効率が47.2%に達した。実現すれば、世界最高水準といえる。F1などの競技車で採用が広がるプレチャンバー(副燃焼室)技術を活用し、超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)を実現する。2020年代の実用化を目指す。

 ホンダは2018年に発売した「アコードハイブリッド」の2.0Lガソリン機で、最高熱効率40.6%を達成した。将来に向けては最高熱効率45%、比出力80kW/Lの両立を目標に開発を進めている。プレチャンバー技術を使った超希薄燃焼は、目標達成に重要な技術と位置付ける。

2019年のF1第5戦スペインGP決勝。ホンダがエンジンを供給するAston Martin Red Bull Racingは3位で、表彰台に立った。エンジンにはプレチャンバー技術を採用しているとみられる。(出所:ホンダ)
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 2019年5月に開催した自動車技術会春季大会で、本田技術研究所第3技術開発室上席研究員の新里智則氏が、2030年に向けたホンダのエンジン技術について発表した。

 ホンダの今回の実験では出力より熱効率を重んじたようで47%に達したが、「量産するときは、高い比出力と両立するために熱効率は45%くらいが目標になる」(新里氏)と語った。

フェラーリやダイムラーがF1にプレチャンバー

 最近、日系自動車メーカー各社が、ガソリン機の熱効率で最高値を高める開発に力を注ぐ。ホンダはかねて、トヨタ自動車と世界首位を巡って競ってきたが、現在は41%に達するトヨタの後じんをわずかに拝する。プレチャンバー技術による超希薄燃焼の実現などで、再び首位に返り咲きたい。

 熱効率向上を目指し、各社が力を注ぐ技術の1つが超希薄燃焼である。空気と燃料の質量比率(空燃比、A/F)で30を超える希薄な混合気を燃焼する超希薄燃焼は、ガソリン機で一般的な理論空燃比(14.7)の燃焼に比べて熱効率を高められる。

 加えて空燃比で30を超えるほどに極めて薄くできると、燃焼温度が低くなり、窒素酸化物(NOx)の排出量を低く抑えられる。

 かつてドイツBMWや同ダイムラー(Daimler)が実用化していた希薄燃焼は、空燃比で17前後にとどまるとされ、NOx排出量が多くなりがちだった。

 一方で、超希薄にすると着火しにくく、安定して燃えにくい。ホンダが安定燃焼の実現手段として着目したのが、プレチャンバー技術である。

 同技術は、点火プラグの先端を小部屋(プレチャンバー、副燃焼室)に収めて火を着けるもの。点火プラグの先端に、小さな穴を設けた金属キャップをかぶせるイメージである。

 プレチャンバー内で混合気を点火すると、複数の小さな穴から火炎が主燃焼室に飛び出る。超希薄な混合気を燃やせるのは、複数の火炎が広がる「多点点火」に近い燃焼形態になることが大きい。

プレチャンバー技術で多点点火になるイメージ。複数の小さな穴から火炎が飛び出る。同技術を開発するIAVの資料を基に作成した。
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 加えて小さな穴から飛び出るときに火炎が高速になることも、燃えやすくする。

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