「FishTech(フィッシュテック)で持続可能な水産業を目指す」――。こう語るのはオーシャンアイズ社長の田中裕介氏だ。

 同社は京都大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者が設立したベンチャー企業である。2019年4月、養殖業者に海況情報を知らせるWebサービス「SEAoME(しおめ)」の提供を始めた。2019年10月には、漁場の探索を支援するサービス「漁場ナビ」も始める。

オーシャンアイズ社長の田中裕介氏
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 SEAoMEは日本の周辺海域を1.7kmメッシュで区切り、14日先までの海況を予測してくれる。予測するのは海水温や塩分濃度、流速、そして海面高度だ。養殖業者や水産試験場に売り込む。田中氏は、「これらのデータを組み合わせると突発的な潮の流れや赤潮の前兆をつかめる。漁場に被害が及ぶ前に対策を打てる」と話す。料金は個別見積もりで、年額数十万円から数百万円だ。

 海況予測には、気象庁が提供する10kmメッシュのデータを使う。「ただし、10kmメッシュでは豊後水道や瀬戸内海といった、狭い海域をうまく分析できない」(田中氏)。そこで、海の物理的な状態をコンピューター上で表す「海洋モデル」を1.7kmメッシュで構築。気象庁のデータを基に、JAMSTECが設置するスパコン「地球シミュレータ」で14日先までの海況を予測する。SEAoMEは、その結果をWebサービスとして閲覧できるものだ。

 1日に1回の頻度でシミュレーションを実行し、海況予測を更新する。「メッシュをさらに細かくすることも可能だが、計算コストと需要のバランスをとった」(田中氏)。同社は2017年7月~2018年3月、新潟県佐渡市でSEAoMEの性能を検証した。海水温の予測値と実際の計測値を比較したところ、誤差は最大1度ほどだったという。

 「SEAoMEがあれば、養殖業者は事前に対策を打てる。例えば、魚の出荷時期を変更したり、いけすに蓋をして海水温の上昇を避けたりできる」(田中氏)。SEAoMEは現在、東北沿岸と九州南西の海域でサービスを始めている。今後、東日本沿岸、日本海沿岸、沖縄周辺の海域にも拡大していく。「2020年3月までに日本全域をカバーする計画だ」(田中氏)。

「SEAoME(しおめ)」の画面例
(出所:オーシャンアイズ)
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