NECが約1360億円を投じて買収したデンマーク最大手のIT企業KMDとの間で、買収効果を発揮するための統合作業を急いでいる。海外売上高比率が26%(2018年3月期)と、日立製作所の50%(同)や富士通の37%(同)と比べて低い現状を改め、グローバルでの成長を目指す。

 KMDのEva Berneke CEO(最高経営責任者)は、2019年5月中旬に東京都内のNEC本社で日経 xTECHの取材に応じた。NECは2018年12月に同社の買収を発表し、2019年2月に子会社にした。

NEC傘下に入ったデンマークKMDのEva Berneke CEO(最高経営責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 「2019年2月下旬から統合効果を高めるための90日プロジェクトをNECと一緒に進めてきた。人事や法務面の調整などが順調に進んでおり、5月末に完了する。今後、公共と金融分野での投資を強化したい」。Berneke氏はNECによる買収の手応えを強調した。

 さらにBerneke氏は「KMDが強みを持つ電子政府システムについては、デンマーク国内はもとより北欧諸国など電子政府先進国での展開を優先する。ゆくゆくは日本にもシステムやノウハウを輸出したい」と述べた。

元国営のKMD、政府システムに強み

 KMDはもともとデンマークの国営企業で、同国内の中央・地方政府向け情報システムで高いシェアを握る。民営化後に投資ファンド傘下に入り、現地で「プロ経営者」として著名なBerneke氏を経営トップに招いて民間企業への脱皮に向けた構造改革を進めてきた。NECによる買収後もKMDは独立した会社として事業を継続し、引き続きBerneke氏が指揮を執る。

 NECとBerneke氏は、KMDの既存事業を強化しつつ、金融などの民間企業向けやデンマーク国外の政府向けシステムの展開を強化する青写真を描く。そのためにNECが持つ生体認証やAI(人工知能)といった技術を生かし、相乗効果を出す考えだ。

NECの生体認証技術をKMDの電子政府システムに取り込むことを狙う
(出所:NEC)
[画像のクリックで拡大表示]

 Berneke氏は「デンマークはまだ生体認証のシステムが普及していない。公共システムのセキュリティーを強化するうえでNECの技術は重要だ」と話す。「KMDの電子政府データベースとNECのAIデータ分析技術を組み合わせれば、より高度な行政サービスを提供できる」(同)という。

子どもの遅刻データから家庭問題を検知

 Berneke氏は具体例として、こんな構想を話した。KMDはデンマーク国民の教育や健康に関する詳細なデータを収集している。「予約した歯医者に来なかった」「学校に頻繁に遅刻するようになった」といった子どもを放置すると不登校や中退などにつながり、さらには教育水準低下や犯罪につながる可能性がある。

KMDが蓄積する行政や健康、教育などのビッグデータを横断的に分析し、新たな付加価値につなげることを目指す
(出所:NEC)
[画像のクリックで拡大表示]

 KMDは行政機関向けに、デンマーク国民の教育や健康に関するデータの分析システムを提供する。行政機関は同システムを使って子どもの状況を早期に検知し、両親の年収など家庭の状況と合わせて分析することで、問題を早期に発見できるようになる。「家族の問題は早期に認識して対処することが重要。先送りすると対処が難しくなり、行政コストが増大する」(Berneke氏)。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら