希少疾患患者の創薬研究への参加を促すプログラム開始、東大ITヘルスケア講座

3Hホールディングスと共同研究

2019/05/23 05:00
高橋 厚妃=日経 xTECH/日経デジタルヘルス

 東京大学と、医薬品の臨床開発の支援事業などを手掛ける3Hホールディングス(旧クロエグループ)は、新規の共同研究である「患者中心主義に基づく希少疾患研究開発プログラム(Patient Centricity in Rare Disease R&D Program:PCRD2)」を2019年6月に開始する。患者自身による医療情報の管理と利活用に基づく医薬品などの開発を推進することを目的に、東京大学大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座で実施する。

患者中心主義に基づく希少疾患研究開発プログラム
(出所:東京大学と3Hホールディングス)
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 希少疾患や難病の領域では、有効な医薬品が開発されていないケースが多いことに加え、明確な診断方法が確立されていない場合もある。一方で、製薬やベンチャー企業の研究者は、患者の血液などのサンプルや健康情報を収集して創薬研究に利活用するのは難しい状況にある。

 そこで東京大学と3Hホールディングスは、希少疾患患者や診断がつかない患者と、製薬やベンチャー企業をマッチングさせるシステムを構築する。具体的には、患者から、医薬品や診断薬などを開発する研究に対する要望をアンケート調査し、その結果を企業の研究者と共有する。逆に研究者からも、研究の目的と期待される結果を患者に説明してもらい、双方の了解が得られた場合に限り、患者の医療情報やサンプルが提供される。研究者は、それに対応する研究結果を患者に通知する。

まずは20のプログラムで開始

 第1期は、20のプログラムで患者と企業の研究者をマッチングさせる。プログラムは、基本的には疾患別で進める予定で、医薬品の他にも診断を補助するような技術の開発も含んでいる。

 患者から収集するサンプルは、血液などを想定しているが、今後研究者と協議して決める。「東京や大阪に、同意の取得やサンプル採取を専門に手掛ける医療機関を発足させることを検討している」と3Hホールディングスの3Hライフサイエンス研究所の牧大輔所長は話す。

 アンケートは、希少疾患の患者団体などを通じて答えてもらう。他にも、3Hホールディングスのサービスに登録している患者に対してもアンケートを公開して広く意見を募集する方針だ。

3Hホールディングスの3Hライフサイエンス研究所の牧大輔所長
(写真:日経 xTECH)
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 今回、3Hホールディングスが東京大学と組むのは、ビジネスとして開始するにはまだ解決すべき課題があるからだという。牧所長は、「ビジネスとして進めると、研究者のニーズをマネタイズするところに注力しがちだ。患者と研究者のマッチングを国内で維持していくためには、倫理的な問題やコミュニケーションのギャップの問題を解決する必要がある。また、研究者が満足できる開発支援はどのようなものか、研究結果を患者にどのように戻していくのかということも検討していきたい」と見解を話した。

「患者中心主義」の考えが欧米で広まる

 欧米では、患者が自身の情報を理解し医療に参加するケースが増えている。患者が自身の症状や治療法などの情報をウェブサイト上に書き込んで他の患者と情報を共有する「PatientsLikeMe」と呼ばれるプラットフォームが有名だ。日本でも炎症性腸疾患の患者が自身のデータを入力するプラットフォームなどが登場している(関連記事)。

 東京大学大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座の今村恭子特任教授によると、患者を中心とした医薬品開発などに関する論文が、近年増加傾向にあるという。今村特任教授は、「一時的なトレンドではなく、止められない流れだ」と話していた。

東京大学大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座の今村恭子特任教授
(写真:日経 xTECH)
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