パソコンやテレビ、ゲーム機などの電子機器は、電源コンセントから交流電力を供給しているものの、その内部は直流電力で動いている。モーターやコンプレッサーを使うエアコンや掃除機、洗濯機などの電子機器も同様だ。インバーターを搭載する機種では、交流電力を直流電力に変換し、さらにそれを高周波の交流電力に変換して駆動している。電力変換を行えば、電力損失が発生する。こうした電力損失は決して少なくない。

 そこで、一般住宅や工場、オフィス、データセンターなどの屋内配電網を直流化し、直流電力を電子機器に直接供給する「直流給電/配電」の開発が活発化している。直流給電/配電を導入すれば、損失削減などのメリットが得られる。すでに一部のデータセンターでは実用化が始まっている。しかし、日本国内では導入事例が思うように増えていないのも事実だろう。しかし、海外ではゲームチェンジングの技術として事業化を狙う企業も出てきている。

 こうした中、2019年5月20日から直流技術に関する国際学会「The 3rd IEEE ICDCM(International Conference on DC Microgrids)」が日本で初開催される。現在、直流給電/配電の実用化に向けた動きはどうなっているのか。最新動向に精通する、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) スマートコミュニティ部 主査の廣瀬圭一氏に聞いた。

直流給電/配電を取り巻く最新動向は。

新エネルギー・産業技術総合開発機構 スマートコミュニティ部の廣瀬圭一氏

 実用化に向けた機運が世界的に高まっている状態にある。背景にあるのは、再生可能エネルギーの急速な普及だ。再生可能エネルギーにおいて導入量の多い太陽光発電システムは直流電力を生みだす。また、自家消費向けに設置が進む蓄電池も直流電力を利用することから、社会インフラとして直流利用のメリットに注目が集まってきた。

 一方、需要サイドでもほとんどの電子機器が直流で動く。従って、直流で発電した電力をそのまま利用したほうが極めて効率的である。もちろん、交流で動く電子機器もある。その点については適材適所が求められるだろう。しかし、発展途上国においてまだ電化がされていない地域については、太陽光発電システムと蓄電装置に組み合わせ、直流電力のまま住居内の電子機器に供給する「オールグリーン」の電力システムがこれから普及する可能性がある。

欧米諸国では、直流給電/配電をどのように捉えているのか。

 非常に好意的だ。例えば、英国ロンドンに本社を置く国際的な総合エンジニアリング会社であるARUP(Ove Arup & Partners)社は、「ほとんどの電子機器が直流電力で動作するため、その市場規模は非常に大きい。すべて直流給電/配電でも問題ない」という主旨のレポートを発表している。

 さらにIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)では、直流利用の展望という議論を展開している。現時点では、「安全性に関する技術理解や標準化などの課題が残っており、科学技術的なインプットが必要な状況にある。今後も、原理原則に沿って議論を続けていく必要がある」という立場を採っている。

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