伝統工芸「輪島塗」で有名な石川県輪島市。2019年4月、海沿いののどかな観光地に青いボディーの燃料電池車(FCV)が走った(図1)。手掛けたのは2輪車大手のヤマハ発動機である。グループ会社で生産する4輪ゴルフカートをベースに、量産を見据えた試作FCVを開発した。

 かねて進めてきた電気自動車(EV)を使っての商用サービスにFCVを組み込み、航続距離の短さや充電の待ち時間といったEVの弱点を埋めていく。地方の貴重な交通手段として存在感を高め、将来の競争力確保に向けた地盤固めを急ぐ。

図1 ヤマハ発動機の小型4輪燃料電池車(FCV)「YG-M FC」の試作モデル(撮影:日経 xTECH)
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 同社は「ランドカー」と呼ぶゴルフカートを展開しており、今回、既存の4人乗り車両のプラットフォーム(PF)に燃料電池(FC)スタックや水素タンクといった基幹部品を組み込んだ格好だ。

 車両区分は黄色ナンバーの軽自動車で、乗車定員は運転者を含めて4人である。前席に2人、後席に2人座れる。車両寸法は、全長3370×全幅1340×全高1710mmで、車両質量は640kgである。

 ベースとしたEVカートに比べて、航続距離は約4倍の160kmまで延ばしている。輪島市での周遊コースは1周約3kmのため、1回当たり約7分の水素充填で数日間連続して運用できる。航続距離が40kmほどのEVカートでは、1日の運用で最低1回は充電する必要があった。充電中の時間は車両が稼働できず、収益性は落ちてしまう。

 最高速度は19km/hに設定しており、観光地の景色を楽しみながらゆったりと走れる。モーターの最高出力は9.6kWで、同社の小型EVスクーター「E-Vino」が搭載するモーターの約8倍だ。ベースとしたEVカートからの流用だという。

“心臓”は海外メーカーに頼る

 FCスタックなどのユニット類は後席下に搭載している。水素タンクは車両後部の荷室部分に載せている。前席下に搭載する駆動用のリチウムイオン電池に電力を供給し、後輪部分のモーターを動かして走る。水素の充填口は右後輪の上部に設けた(図2)。

 既存の車両PFにFCVの基幹部品を当てはめていく設計工程は「まさにパズルを解いているような状態だった」――。FCシステムの開発責任者を務めた同社EM開発企画部基盤強化グループ主査の村松恭行氏はこう開発を振り返る。

図2 各基幹部品の搭載位置(出所:ヤマハ発動機、撮影:日経 xTECH)
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