高度2万メートルの成層圏を飛行する無人航空機を通信基地局として運用する「成層圏通信プラットフォーム事業」を開始すると発表したソフトバンク。その背景には米スプリント(Sprint)での苦い経験があったと、ソフトバンクの宮川潤一副社長兼CTO(最高技術責任者)は本誌に明かした。

 「資本提携したスプリントの改造を日本流でやろうと思っていたが、彼らは我々のことをそもそも尊敬していなかった。尊敬していない人間の言うことは半分しか聞かないし、我々のことは『お金を持ってくるのが仕事』としか思っていなかった。これは本当に苦しかった。グローバル進出するとしたら、圧倒的なテクノロジーを持って尊敬された状態でやりたいと痛感した」。

 ソフトバンクの宮川副社長は、成層圏通信に参入した動機を率直にこう語る。

ソフトバンクの宮川潤一副社長兼CTO(最高技術責任者)
撮影:加藤 康
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 誰もまだ持たない圧倒的なテクノロジー。それが、無人航空機「HAWK30(ホーク30)」だ。軍用ドローンの開発・製造で実績がある米エアロバイロンメント(AeroVironment)との合弁会社「HAPSモバイル」が開発した。

 成層圏に通信基地局を整備する取り組みは一般に「HAPS(High Altitude Platform Station)」と呼ぶ。基地局を整備しづらい地上のへき地などを、上空2万メートルの基地局からカバーする仕組みだ。アフリカや東南アジアといった発展途上国での携帯電話網整備に有望な方式とされる。ソフトバンク以外にも米グーグル(Google)系の米ルーン(Loon)や米フェイスブック(Facebook)などがHAPSの実証実験を進めている。

強みは75キログラムのペイロード

 しかしフェイスブックが使用する欧州エアバス(Airbus)の高高度ドローンである「ゼファー(Zephyr)」のペイロード(搭載できる荷物の重量)が5キログラムなのに対して、HAPSモバイルが開発したHAWK30は75キログラム。このペイロードの違いが、大きな差なのだと宮川副社長は指摘する。

HAPSモバイルの無人航空機「HAWK30」の40分の1模型
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 「無人航空機を成層圏に浮かべて24時間365日運航するだけなら技術的に難しくはない。しかし通信システムを成層圏に浮かべ、そこから電波を発するだけの電力を確保するにはHAWK30のペイロードが不可欠」(宮川副社長)というのがその理由だ。

 HAWK30は横幅78メートルの巨大なプロペラ機で、太陽光発電によってプロペラを駆動し、特定の場所の上空を旋回しながらとどまり続ける。「我々の方式では基地局が上空固定なので、ユーザーによる基地局のハンドオーバーなどを細かく制御できる。つまりキャリアグレードのサービスを提供できる」(宮川副社長)。

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