「撤退ラインへ抵触する蓋然性が高まった」。マネーフォワード社長の辻庸介氏は2019年11月期第1四半期決算発表の記者会見で、仮想通貨事業への参入を断念すると明らかにした。仮想通貨関連事業の交換業者登録に向けた手続きの中止のほか、取引所のシステム開発の停止とブロックチェーン・仮想通貨のメディアの終了を打ち出した。

マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏(右)とマネーフォワードフィナンシャル代表取締役社長の神田潤一氏
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1年以上かけて準備

 金融庁は2019年1月にコインチェック、同年3月25日に楽天ウォレットとディーカレットの2社に対し、仮想通貨交換業の登録を認めるなど、停滞していた仮想通貨行政を再び動かし始めていた。一方、仮想通貨事業を主導していたマネーフォワードの子会社、マネーフォワードフィナンシャル社長の神田潤一氏は日経FinTechの取材に対し「システムはほぼ完成していた」と回答。1年以上かけて進めてきた準備が、ようやく花開こうとしていた矢先での経営判断だった。

 辻氏が会見で触れた「撤退ライン」とは何か。企業は新規事業に乗り出す際に、一定のルールを設けるのが一般的だ。マネーフォワードの場合、「累積損失をどのくらいまで許容可能なのか」「黒字化にどのくらいの時間がかかるのか」など複数の条件を持っていたようだ。

 マネーフォワードにとっての誤算は、2018年9月にテックビューロの仮想通貨交換所「Zaif」が流出事故を起こしたことだ。これによって、金融庁が新規登録の凍結を延長させたほか、仮想通貨市場の冷え込みが長引くと判断。当初、想定していたシナリオが大幅に狂う結果となった。

 環境変化に合わせた経営のかじ取りは当然だが、ここまで市場変化が激しいと撤退ラインの適用は経営陣に委ねられる。マネーフォワードが今回下した決断は“例外無き”厳格運用だった。

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