移動需要に合わせて柔軟にルート変更するNTTドコモのAI運行バスが商用化に至った。スマホで予約でき、人を乗せて運ぶ効率は従来の5倍と高い。「食べる」など目的に沿って行き先を選択でき、都市部の観光用途にも期待できる。

 NTTドコモは利用者の移動ニーズに合わせてバスを運行する「AI運行バス」の商用サービスを2019年4月1日に始めた。利用者が専用アプリでバスの乗車予約をすると、予約情報を基にAIが効率的なバス配車やルートをリアルタイムで決める。同日から九州大学の伊都キャンパスで商用提供を始めた。

NTTドコモが商用化したAI運行バス。第1弾として九州大学の伊都キャンパスで運行している
(出所:NTTドコモ)
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 ドコモが「地方の生活の足」という用途に加えて狙うのが、都市部や観光地の移動ニーズだ。「オンデマンド型バスというと地方に住む高齢者向けのイメージがあるが、AI運行バスであれば都市部や観光地のニーズにもマッチする」とNTTドコモ IoTビジネス部 先進ビジネス推進の葛原毅ビジネス推進担当課長は話す。

 都市部においては電車などと連携した移動サービス、観光地においては土地に不慣れな観光客をサポートする移動サービスの位置づけを目指す。

 2021年3月までに100エリアでの導入を目指し、自治体や大学、交通事業者などに採用を働きかける。1営業区域あたり初期費用50万円(税別)、月額費用が18万円(税別)から導入できる。

新たな需要に応じて即ルート変更

 AI運行バスは利用者がバスに乗る時刻や場所、人数を指定して、そのニーズに合わせてバスが運行するオンデマンド型交通サービスだ。出発地や目的地が異なる複数の利用者の予約データと、走行している複数のバスの位置情報や向かっている方面などの運行データをAIが分析し、膨大な組み合わせの中から最適なバスの配車やルートを算出する。新たに需要が発生するたびに配車やルートを更新する。

 バス停に決まった時間に来て固定のルートを走る「巡回型バス」と違い、時刻表もなく、乗り降りの需要のないバス停はショートカットする。

 サービス内容は次の通りだ。利用者はまず専用のアプリをスマホにダウンロードする。次に「目的地を選んで予約」を選び、行き先(降車ポイント)を指定する。その後出発地(乗車ポイント)や人数、時刻を選択すると予約が完了し、予約情報をドコモのクラウドに送信する。ドコモのクラウド上でAIが新たな予約に応じて効率的な配車とルートを判断し、バスドライバーのタブレット上にバスが次に向かう乗降ポイントを通知して、バスが利用者を迎えに行く仕組みだ。

 ドコモが商用サービスを始めた九州大学伊都キャンパスは、単一のキャンパスとしては国内最大規模の約270ヘクタールの面積だ。2018年10月から約1万9000人の学生・教職員が通勤・通学しており、商用サービス開始後、授業期間中は一日当たり約700人のAI運行バスの利用を想定する。

 利用者がバスに乗り降りする地点の「乗降ポイント」は37カ所設けた。従来の循環型バスから置き換える形で導入した。循環型バスの時はバス停が16カ所だったため、乗り降りできる場所が2倍以上に増えた。授業がある期間は1台から5台、長期休暇の時期は1台から3台のバスが運行している。AI運行バスの待ち時間は平均で7〜8分ほどという。

AI運行バスが九州大学キャンパス向けに提供しているスマホアプリ「aimo」の画面例。目的地をバス停の名前や地図上から選んで、バスの予約ができる
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 ドコモは商用化までに全国10カ所で実証実験を重ねた。兵庫県・神戸市や群馬県・前橋市などの生活交通用途の実証に加え、観光用途は横浜・みなとみらい、札幌市内、東京臨海地区など5カ所でAI運行バスを走らせた。

 「バスの乗客の周遊性の向上などの効果も得られたため商用化に踏み切った」と葛原ビジネス推進担当課長は話す。2018年10月から12月にかけて実施した横浜・みなとみらいの実証実験では、66日間で3万4000人を31カ所の乗降ポイントの行き来で運んだという。利用者へのアンケート結果では「AI運行バスを利用することで訪問場所が増えた・広がる」と回答した人が回答全体の約7割にのぼった。

「食べる」など目的で行き先を選べる

 ドコモはAI運行バスが観光地でも通用するようにするため、バス予約アプリとAIに工夫を凝らした。

 ドコモが開発したバス予約アプリの最大の特徴は、利用者が行き先を選ぶ際に、降車ポイントを選択する機能だけでなく、「和食を食べたい」「観光スポットに行きたい」などの目的を選ぶことで行き先を決定できる点だ。

 先行して商用運行を始めた九大キャンパス向けの予約アプリには「学ぶ」「食べる」「動く」などのタブを用意。例えば「食べる」のタブを押すと食堂やカフェなどが画面に並び、利用者は行きたい場所を選択できる。行きたい場所のページから直接、一番近い降車ポイントを指定できるようになっている。

AI運行バスのスマホアプリ「aimo」の画面例。「学ぶ」「食べる」「動く」など目的別に行き先を選べる
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 運行地域内の店舗や施設、周辺サービスとも連携できる。「自治体の要望に応じて様々な目的タブを設けられる。例えば地域の飲食店や観光施設、スーパーや病院などの情報を表示できる」(葛原ビジネス推進担当課長)。

 例えば飲食店のクーポンや施設のイベントをアプリ内に表示して利用者の周遊や送客につなげることができれば、自治体にとってAI運行バスは地域活性化の手段になり得る。「みなとみらいの実証実験では当初250店舗に協力してもらっていたが、運行期間中に追加してほしいという声が増え、最終的に500店舗の情報を掲載した」と葛原ビジネス推進担当課長は話す。飲食店に加え、観光スポットやファッション店舗、日帰り温泉施設などが含まれる。

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