Webサイト閲覧者が使うパソコンの処理能力を利用して仮想通貨のマイニング(採掘)をする「Coinhive(コインハイブ)」を設置したサイト運営者の男性に横浜地方裁判所が無罪を言い渡した判決について、検察側が2019年4月10日に控訴した。

 コインハイブの設置を巡っては、全国の警察が不正指令電磁的記録(コンピュータ・ウイルス)に当たるとして一斉集中取り締まりに乗り出していた。そもそも何がコンピュータ・ウイルスに当たるのかという刑法の法解釈などが、東京高等裁判所で争われる。

男性の弁護人として無罪判決を掲げる平野敬弁護士
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 ウイルスについて刑法は、人が電子計算機を使用する際に「その意図に沿うべき動作をさせず、またはその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」としている。プログラムに対する社会一般の信頼を守ることを保護法益として、ウイルスとして実行させる目的があったかといった要件を設けている。

 警察庁はコインハイブの設置を巡って2019年3月の衆議院法務委員会で、これまでに全国で不正指令電磁的記録保管・供用などの疑いで28件、21人を検挙したと答弁した。現在も立件に向けた捜査が続いているとみられる。

横浜地裁は「責任を問うのは行き過ぎ」

 男性はWebサイトの閲覧者の同意を得ずに、仮想通貨「Monero(モネロ)」の取引履歴の承認作業などを行わせるマイニング(採掘)の報酬を得る目的でプログラムコード(JavaScript)を設置して、刑法の不正指令電磁的記録保管罪に問われた。

 男性は2018年3月末に自ら運営するWebサイトにコインハイブを設置したとして神奈川県警察の摘発を受けて、横浜簡易裁判所から罰金10万円の略式命令を受けた。しかし命令を不服として正式裁判を請求して起訴された。

 横浜地裁が2019年3月に言い渡した判決はコインハイブについて、一般的に認知されておらず閲覧者が実行を承諾したとは言えないとして、「人の意図に反する動作をさせるプログラムに該当する」とした。しかし一方で、不正な指令を与えるプログラムに該当すると判断するには合理的な疑いが残るとして無罪とした。

 判決はプログラムコードが不正な指令を与えるものかについて、「Webサイトの閲覧者ら一般的なユーザーにとっての有益性や必要性の程度、ユーザーへの影響や弊害の度合い、プログラムに対するユーザーら関係者の評価や動向などの事情を総合的に考慮し、プログラムの機能の内容が社会的に許容しうるものであるか否かという観点から判断するのが相当」と指摘した。

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