「アジャイル開発とソフトウエア工学(ソフトウエアエンジニアリング)の間に分断が起こっている。分断を解消して、両者を生かす方策が必要だ。ソフト工学は古いイメージで捉えられがちだが、大切な知見を内包している」。

 永和システムマネジメントの平鍋健児社長は、現在作成中の新たなソフト工学体系「SE4BS(Software Engineering for Business and Society、ビジネスと社会のためのソフトウエア工学)」に込めた問題意識をこう説明する。

2019年度に第1版を公表、カリキュラムにも組み込む

 SE4BSは「新規ビジネスのアイデア」を「アイデアを具現化した製品やサービスを支えるソフトウエアの開発・保守」につなげるための様々な手法を体系化したものだ。「スクラム(Scrum)」などのアジャイル開発やデザイン思考、リーンスタートアップ、ビジネスデザインの方法論「匠Method」のほか、既存のソフト工学の手法も取り入れる。

ソフト工学体系「SE4BS」の作成メンバー。左から永和システムマネジメントの平鍋健児氏、豆蔵の羽生田栄一氏、早稲田大学の鷲崎弘宜氏、匠BusinessPlaceの萩本順三氏
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 新たなソフト工学体系の創出に向けて、ソフト分野のスターともいえる「四賢人」が集結した。

 ソフト工学研究の第一人者であり早稲田大学のグローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長を務める鷲崎弘宜教授、日本におけるアジャイル開発手法の普及を主導してきた平鍋社長、匠Methodの提唱者である匠BusinessPlaceの萩本順三社長、そして黎明(れいめい)期から日本のオブジェクト指向技術をリードしてきた豆蔵の羽生田栄一取締役だ。

 2019年度(2020年3月期)中にSE4BSの第1版を公表するほか、早稲田大学におけるソフト工学の教育カリキュラムに取り入れていく。日本語版のほか英語版を作って、世界にも成果を広めていく考えだ。

 「DX(デジタル変革)時代のソフト工学の在り方を世に問いたい」。早稲田大学の鷲崎教授はこう意気込む。

個々の手法の特徴を見直して「つなぎ」を整理

 DXを支えるイノベーションやソフト開発の手法は様々ある。著名なものはデザイン思考やアジャイル開発などだ。

 だが様々な手法が存在するものの、最上流に当たる「ビジネスアイデアの創出」からアイデアを形にした「製品・サービスを支えるソフトの開発・保守」までを一気通貫に体系化したものは存在しない。「欧米はまずデザイン思考を手掛け、その後にアジャイル開発をするといった、やや安直な組み合わせが多い」と羽生田取締役は話す。

 この状態を放置しておくと、DXプロジェクトを立ち上げたとしてもアイデアをソフトウエアの形にしていく作業がスムーズに進まない恐れがある。「ビジネスとITの断絶を解消できず、貧乏暇無しの状態から脱却できなくなる」と萩本社長は警鐘を鳴らす。SE4BSはDXに必要な道筋を系統立てて示して、問題の解決を狙う。

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