英アーム(Arm)Director, ADAS/Automated Driving Platform Strategyの新井相俊氏は、2019年4月4日に開いた「Japan Media Tech Day」で同社のADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術への取り組みについて講演した。

Arm Director, ADAS/Automated Driving Platform Strategyの新井相俊氏(撮影:日経 xTECH)
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 現在公道を走っている自動運転の試験車両はサーバー用のプロセッサーやGPUを搭載しており、システムの消費電力は「2000~3000W、場合によっては5000~6000Wにも達する」(同氏)という。量産車に使う際には、システムの消費電力を1/10~1/100、コストも1/10以下に抑える必要がある。また、安全性を確保するために、システムの冗長性も高めなくてはならない。アームのCPUコアはこうした要求に応えられるという。

 同社は2018年にクルマの機能安全に関する「Safety Ready」と呼ぶプログラムを始めた。アームの顧客やパートナーは機能安全規格「ISO26262」の認証取得プロセスを簡易化できるという。自動運転システムの開発では、ハードもソフトも機能安全の認証取得プロセスが複雑化し、大きな負担になる。これを軽減する取り組みだという。

 このSafety Readyに対応したアームのCPUコアは「Automotive Enhanced(AE)」と呼ぶ名称が付く。最大の特徴は、「Split-Lock」と呼ぶ機能を搭載すること。安全性よりも性能が求められる用途では2つのCPUを別々に使う「Splitモード」に、安全性が求められる用途では2つのCPUを冗長化に使う「Lockモード」に、ダイナミックに変えられる。

「Split-Lock」の使用例(出所:Arm)
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 ADASや自動運転など、高い安全性が求められるシステムでは、通常2つのCPUを同時に動かし、それぞれの動作結果を比較することでエラーを検出する「デュアルコア・ロックステップ」と呼ぶ方式が使われる。この場合、2つのCPUが必要になるほか、動作の比較を外付けのマイコンで行うため、レイテンシーが長く、エラーの発見が遅れやすくなる。部品コストも高くなる。

 これに対し、Split-Lockでは、デュアルコア・ロックステップ(Lockモード)の場合はエラー検出をSoC内部の比較器で行うため、レイテンシーが短い。部品点数も減る。さらに、インフォテインメント(IVI)のように冗長性よりも高い性能が求められる用途では、2つのCPUを別々に使うSplitモードにすることで、リソースを有効活用できる。SplitモードではASIL-B、LockモードではASIL-Dにそれぞれ対応する。

1つのSoCでASIL-BにもASIL-Dにも対応(出所:Arm)
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 Split-Lockを初めて導入したのが、2018年10月に発表した車載向けCPUコア「Cortex-A76AE」である(関連記事)。アームの技術者が世界の自動車メーカーと協議し、自動運転車に必要な性能や機能を盛り込んだという。16コア構成のSoCにした場合、消費電力30W(CPUコア部分の消費電力は15W)で250KDMIPS(毎秒2500億命令)の性能を実現できる。「自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)から高い評価を受けている」(同氏)という。

 設計は7nm世代の半導体プロセスに最適化した。これは顧客との協議により、「次世代のADASや自動運転システムは7nm世代の半導体技術を使うことが見えたため」(同氏)とする。

 Cortex-A76AEベースのSoCを1個使えば、IVIなどのコックピットシステムを実現できるほか、ADASや自動運転システムも実現できる。このため、「クルマの電気/電子(E/E)アーキテクチャーを大きく変える可能性がある」(同氏)と説明した。分散型から中央処理型のアーキテクチャーに代わることで部品コストを削減できるほか、「ソフトウエアのエコシステムにも大きな影響を与える」(同氏)。

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