医学部生がAIを学ぶ、「技術を理解した医師」育成

2019/04/09 05:00
河合 基伸=日経 xTECH/日経デジタルヘルス

 「理系トップの医学部に所属する優秀な学生に、医学だけを学ばせるのはもったいない」――。遠隔画像診断事業を手掛けるワイズ・リーディング(熊本市)の代表取締役で医師の中山善晴氏は、医学部生に人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)などの最新技術を教えて、「技術を理解した医師」を育成する取り組みを始めた。医療関係者と工学関係者が連携する「医工連携」とは異なり、医師の内部で医学と工学が融合した新たな人材の輩出を目指す。

ワイズ・リーディングの代表取締役で医師の中山善晴氏
(写真:日経 xTECH)
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 中山氏は「SOCKET」と呼ばれる自社の施設に定期的に専門家を呼んで、AIやIoT、FinTechなどの最新技術について講義してもらっている。「みらいクラブ」と名付けた学習会には、熊本大学などの九州の医学部生が20人ほど集まるという。医学だけでなく技術や起業、デザインなどを学びたい学生を対象にしており、社会の課題を見つけて解決方法を考える。現在は座学が中心だが、今後はプログラムやロボットの作成といった体験型の学習も取り入れていく方針だ。

みらいクラブの様子
(写真:ワイズ・リーディング)
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 当初は、ワイズ・リーディングが得意な画像診断を医学部生などに教える「画像診断塾」を開設し、続いてみらいクラブを立ち上げた。医師に技術を教える取り組みを始めた背景について中山氏は、「医療の世界は保守的で、変えるのにエネルギーが要るから」と説明する。医師が技術を知っていれば、従来の常識を変える方法を提案できる。「医学部の学生は課題解決能力も高く、リーダーとしての素質を備えている場合が多い」ため、医療の形を変える新たな人材が生まれる可能性がある。

SOCKETの内部
(写真:日経 xTECH)
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 SOCKETは医療分野の課題とIoTなどの技術をつなぎ、新たなイノベーションを生み出す場を目指して2017年8月に設立された。3Dプリンターやパソコンなどを用意して、何かアイデアを思い付いたらすぐに形にできる環境を整えた。通常は学生やベンチャー企業などが訪れ、試作品を作ったりしている。運営費用は地元の企業を中心に20社ほどから支援を受けている。

 中山氏には「面白い取り組みをしなければ、若い人が東京に出て行ってしまう」という危機感がある。SOCKETに人や技術が集まれば、自然と地域の活性化にもつながる。こうした取り組みが注目を集めて、他の地域にも広がっていくことを中山氏は期待する。

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