田中耕一氏の研究成果、2019年度に米国で受託分析開始へ

さまざまな疾患に応用できる「質量分析」の可能性とは

2019/03/28 13:40
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 「アルツハイマー病の予防薬や根治薬の開発がことごとく失敗している。その一番の理由は、発症前の早い段階で介入できていないから」。国立長寿医療研究センター 研究所長の柳澤勝彦氏は、2019年3月22日に開催されたシンポジウム「International Symposium on Biomarkers for Alzheimer’s Disease(ISBAD)2019 Japan」の会場でこう語った。

 アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積することで発症するとされている。ただし、アミロイドβが蓄積し始めてから発症するまでには20~30年の時間がかかる。

 アミロイドβの蓄積度合いを検出する方法としては、PET(陽電子断層撮像法)検査や脳脊髄液(CSF)検査が用いられてきたが、PET検査は高額で、脳脊髄液検査は侵襲を伴うという課題があった。

 そんな中、国立長寿医療研究センターと島津製作所が2018年2月に発表したのが、血液を使ってアミロイドβの蓄積度合いを推定できる技術である。この技術を使えば、低侵襲かつ安価にアルツハイマー病の検査ができる可能性がある。具体的には、(1)採取した血液からアミロイドβ関連ペプチドを抽出する、(2)アミロイドβ関連ペプチドが血液中にどれだけ含まれているか質量分析する、(3)アミロイドβの脳内蓄積量を推定する、の3工程から成る技術だ(関連記事1)。

「ISBAD 2019 Japan」で講演する田中耕一氏
クリックすると拡大した画像が開きます

 2018年8月には、この技術を使って脳内のアミロイド蓄積度合いを推定する受託分析「アミロイドMS受託解析サービス」を島津製作所と島津テクノリサーチが開始した(関連記事2)。あくまでも研究用で、医療行為や診断目的に用いることはできない。

 島津製作所 田中耕一記念質量分析研究所 所長でシニアフェローの田中耕一氏によると、受託分析に関して国内外から問い合わせがあったといい、「2019年度前半には米国で受託分析を開始する予定だ」と明らかにした。米国で分析することで、米国に拠点がある製薬企業などが検体を日本へ送る手間を省く。

お知らせ

ピックアップPR

もっと見る

記事ランキング