KDDIは2011年と早い時期からオープンイノベーション体制の整備に取り組んだ国内企業としては希有な存在である。新規事業創出や将来事業のタネの発掘、既存事業の拡大の仕組みとしてオープンイノベーションを活用する仕組みを作り、既にいくつもの具体的な成果を挙げている。

 オープンイノベーションに取り組む国内企業は増えているが、どういう仕組みを造り、どう動かすかという企業の考え方や行動指針などによって、その具体的な成果は大きく左右される。前回はKDDIがオープンイノベーション体制を駆動する仕組みとして活用している「KDDI∞Labo(無限ラボ)」「KDDIオープンイノベーションファンド」「パートナー連合プログラム」のそれぞれについて、成立の経緯と機能を聞いた。

KDDI技術統括本部新技術企画担当の宇佐見正士理事
技術統括本部技術企画本部知的財産室の川名弘志室長

 今回は、3つの仕組みを連携させて活用を加速させる手法やベンチャーを育成するための取り組みについて、KDDIのオープンイノベーション志向の全社的な成長戦略について、全体を俯瞰(ふかん)している技術統括本部新技術企画担当の宇佐見正士理事と同本部技術企画本部の知的財産室の川名弘志室長の2人に引き続き、話を聞いた。キーワードは「ベンチャーファースト」だ。

ベンチャー企業とのオープンイノベーションを推進する仕組みの狙いは?

宇佐見・川名:ベンチャー企業との事業共創スキームを築くための施策としては、2011年7月に「KDDI∞ラボ」(KDDI無限ラボ)というプログラムを開始、翌2012年2月には有望なベンチャー企業に投資して育成するためのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)「KDDIオープンイノベーションファンド」をスタートしました。さらに、2014年7月には「パートナー連合プログラム」を始めました。KDDI∞ラボへの参加ベンチャーやKDDIオープンイノベーションファンドの投資対象になったベンチャーと、大手企業を橋渡しするためのプログラムです。この3つでベンチャーとの事業共創スキームの基本的枠組みはできあがりました(前回参照)。

過去の失敗の反省から生まれた合言葉「ベンチャーファースト」

 これら事業共創スキームの基本的な狙いは、KDDIと将来性が有望な新規のベンチャー企業が、お互いに持つアセット(資産)を融合させるオープンイノベーション体制を推進し、新規事業などを造り上げていくことです(図1)。

図1 KDDIのオープンイノベーション体制の仕組み
(出所:KDDI)
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 ベンチャー企業は開発・事業推進のユニークなアイデアや技術などをスピード感ある速さで深めています。KDDIはこれらのベンチャー企業を、彼らが顧客や社会的信用を得るためのサポートや開発・事業推進のための資金提供などで支えています。

 ベンチャー企業とのオープンイノベーションを推進する際の我々の心構えは「ベンチャーファースト」です。個々のベンチャー企業の考え方などの中身を十分に知り、それぞれのベンチャー企業の成長戦略を第一に考え、そしてベンチャー企業への支援を通じてKDDI自身もスピード感ある事業進化を学びながら新規事業の創出などの目的を達成するのです。

 日本の大企業の多くは、ベンチャー企業から新規事業のアイデアなどを得るのを急ぎ過ぎ、大企業とベンチャー企業が互いにWin-Winの関係で成長するスキームが甘くなりがちでした。「ベンチャーファースト」という我々の合言葉は、こうした失敗からの反省から生まれました。大企業側が新規事業の開発成果を急いで求めすぎる傾向も以前は強かったと聞いており、これを防ぐ意味合いもあります。

 「ベンチャーファースト」重視を改めて誓うことで、KDDIはパートナーであるベンチャー企業の成長を第一に考え、その先にお互いにWin-Winの関係を築くように心がけています。

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