クロスエフェクト(京都府京都市)は、先天性小児心疾患の特徴を模擬した心臓モデルを2019年5月から販売すると発表した。まずは限定1000個のモデルを税別5万2500円で提供する予定で、同年3月15日から予約を受け付けている。

販売する心臓モデル
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 先天性小児心疾患は、新生児の100人に1人が抱えているとされる。その患者数は年間1万2000人に上り、9600件の手術が行われている。その症状は患者によってさまざまで、医師は術前に患者の心臓の3次元構造を正確に理解する必要がある。

 CT画像を使って、心臓を模擬した柔らかい臓器モデルを作り、切ったり縫ったりする術前シミュレーションがしたい――。そんな医師の要望に応えるべく、クロスエフェクトと国立循環器病研究センターは、心臓モデルの開発を進めてきた。

心臓モデルを切っている様子
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従来の方法で製作した心臓モデル
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 従来は、CT画像から心臓のデータを抜き出した後、光造形の3Dプリンターを使って硬質の心臓モデルを作り、鋳型を形成して柔らかい心臓モデルを作成していた。鋳型を作る必要があるため、製作には4日以上の時間がかかる上、高価格で量産化が困難だった。

 そこでクロスエフェクトはSCREENホールディングスや共栄社化学と共同で、インクジェット技術を用いて心臓モデルを造形できる3Dプリンターを開発した。特殊なインクをUV(紫外線)ランプで固めて造形できる仕組みだ。鋳型を必要としないため、最短2日で製作が可能になった。

開発した3Dプリンター
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製作途中の心臓モデル
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サポート材に包まれた心臓モデル。特殊な溶液で洗い流すことで、サポート材を取り除くことができる
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 製作期間が短くなったことに加えて、質感をより実物の心臓に近付けることにも成功した。開発したプリンターは既に2016年12月に発表していたが、当時インクに用いていた樹脂では「柔軟性に課題があった」とクロスエフェクト 代表取締役の竹田正俊氏は言う(関連記事)。そこで、量産開始に当たって、インクにアクリル系誘導体を使用することにした。「超軟質素材なので心臓の質感に極めて近い」と同氏は太鼓判を押す。0.2mmの微細形状も表現可能だという。

 今回販売するのは、(1)心室中隔欠損、(2)心房中隔欠損、(3)修正大血管転位と心室中隔欠損、(4)ファロー四徴症、のそれぞれを再現した4つの心臓モデルである。1年以内には、患者のCTデータを使用した臓器モデルを製作できるよう、クラスⅠの医療機器としての承認を目指しているという。いずれは心臓以外の臓器モデルにも展開していきたい考えだ。

販売する4つのモデル
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