「変速機(トランスミッション)の開発現場は多忙を極めている。基礎研究の領域をみんなで手掛けることで、開発を効率化する」──。2019年3月15日、自動車用動力伝達技術研究組合〔Transmission Research Association for Mobility Innovation;TRAMI(トラミ)〕が名古屋市で第1回フォーラムを開催、成果概要などを発表した。その会場で、同組合理事長であり、ホンダ四輪R&Dセンター上席研究員でもある前田敏明氏がTRAMIの狙いについて冒頭のように語った。会場には約200人が集まり、関心の高さを示した。

TRAMI理事長の前田氏
(写真:日経 xTECH)
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 TRAMIは、2018年4月に国内の11社が立ち上げた共同研究組織だ。内訳は9社の自動車メーカー(いすゞ自動車、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、三菱自動車)と、2社の変速機メーカー(アイシン・エィ・ダブリュ、ジヤトコ)である。企業だけではなく、大学や経済産業省とも連携した産官学の体制を組み、駆動および電動の動力伝達、すなわち、変速機や減速機(以下、トランスミッション)の要素技術を対象とした基礎研究を行う。

会場を埋め尽くした参加者
(写真:日経 xTECH)
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このままでは世界的な競争力を失うという危機感

 注目すべきは、TRAMIが立ち上がった背景だ。実は、トランスミッションの開発現場は超多忙状態にある。開発しなければならない製品の範囲が増大しているからだ。手動変速機(MT)や自動変速機(AT)はもちろん、無段変速機(CVT)や、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、ハイブリッド車向けトランスミッション、EV向け減速機など、パワートレーンの電動化に伴って製品の種類が増えている。加えて、トランスミッションの高性能化により、変速比(段数)は10速までに対応しなければならない。市場(仕向地)によってニーズも異なる。「トランスミッションはエンジンよりも幅広い開発が必要で、全てを個々の会社で対応するには限界を迎えている」(同氏)。

 そのため、個々の会社では現実問題として目先の製品開発に精いっぱいで、基礎研究にまで手が回らなくなりつつある。だが、トランスミッションの機能や性能を底上げするには、基礎研究は必要だ。これでは将来的に日本のトランスミッションの競争力が弱まりかねない。

 こうした危機をどのように乗り越えたらよいのか。その解の1つが、開発の基盤となる基礎研究の領域を、産官学の「文殊の知恵」で開発することだ。基礎研究の領域は、原理・原則やメカニズムの解明など、いわば普遍的な要素技術に関わる部分であるため、誰が研究しても同じ結果が得られ、差が付かない。つまり、競争領域とはなり得ない。そこで、この基礎研究の領域を産官学の壁を越えて共同で効率よく研究し、得られた成果を皆で分かち合う。そして、競争するのは、それらの成果を製品に応用する部分だ。その部分で個々の企業が付加価値をつけるべく競って開発していくのである。

 産官学の連携による開発ではドイツが世界をリードしており、日本は基礎研究と人材育成で後れを取っている。TRAMIはそれを巻き返す取り組みでもある。

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