スマホにつながる人工内耳、雑音環境でも明瞭な通話を(page 2)

加齢性難聴を「しょうがない」で済まさないで

2019/03/15 05:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

「つ」と「す」が聴き分けられる

 そもそも人工内耳と補聴器はどのように使い分けられているのだろうか。

 人工内耳は、高度から重度の「感音性難聴」の患者に効果的な治療法である。感音性難聴とは、中耳(蝸牛)にある有毛細胞の欠損や損傷が原因で引き起こされる難聴だ。一方補聴器は、軽度から中度の感音性難聴や、「伝音性難聴」に効果的とされる。伝音性難聴は、外耳または中耳が原因で音が正しく伝わらない状態のこと。症状は軽度から中度で、一時的なものもある。

 人工内耳と補聴器のどちらも適用できる重度の感音性難聴の場合、医師が患者のニーズを確認して治療法を決める。

日本コクレア 代表取締役社長の清水博行氏
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 感音性難聴の患者も、補聴器を装用することで音を聴くことはできる。しかし、「つ」と「す」を聴き分けたり、音を単語として理解したりするのが難しい場合もある。内耳自体に障害があるので、補聴器でいくら音を大きくしても単語として認識できないからだ。

 ただし、人工内耳の利用には手術が必要になる。さらに、人工内耳の手術が行える医師は「日本で数百人」(清水氏)と決して多くない。耳鼻咽喉科の医師にとっても、人工内耳への理解度や認知度はまだまだ低く、医療機関にかかっても人工内耳を勧められないケースもあるという。

スクリーニングが難しい“高齢者”

 最近は、高齢者の難聴も問題になっている。

 難聴は、その発症時期に応じて大きく3つに分類できる。(1)先天性難聴、(2)中途失聴、(3)加齢性難聴、である。(1)の先天性難聴は、新生児を対象にした聴覚スクリーニングで検査することができる。(2)の中途失聴は病気やケガで耳を失ったり、薬の副作用で聴力を失ったりしてしまうことで起きる。昨日まで聞こえていた音が突然聞こえなくなるため、自ら医療機関を訪れる人が多い。

 一方、(3)の加齢性難聴は、徐々に聴力を失うため本人も周囲も気付きにくい。また、「おじいちゃん最近テレビの音が聞こえないようだけど、年だからしょうがないよね。病気じゃないから気にしないで」と軽視してしまう人も多い。

 ただし、近年の研究では「難聴と認知機能の関係性が注目されているので、加齢性難聴を放っておくことで将来的に別の問題が生じる可能性がある」と清水氏は警鐘を鳴らす。人工内耳や補聴器などの治療を行うのは、難聴に気付いた後、早ければ早い方が良いとされている。難聴を放っておくと、聴こえにくい状態に脳が適応してしまうからだ。

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