京都市産業技術研究所は、セルロースナノファイバー(CNF)を陶磁器の「清水焼」に応用した事例を「第395回 生存圏シンポジウム」(2019年3月4日、主催:京都大学生存圏研究所)で発表した*1。京都市産業技術研究所、京焼を手掛ける陶あん(本社京都市)、第一工業製薬が、CNFを結合材(バインダー)として添加した焼き物を共同開発*2。鋳込み成形での歩留まりが大幅に向上したという。「歩留まりが50%からほぼ100%になった」(京都市産業技術研究所の高石大吾氏)。

*1 CNF 木材などの植物繊維を化学的・機械的な処理によってほぐした、直径が3~数十nmの繊維。

*2 バインダーは、焼き物の原料である粉体のセラミックス材料を焼結できるように形状をまとめる添加物のこと。

 開発した清水焼は透光性を備えている。すりガラスと同程度に光を透過するため、涼しげな印象を与える。開発品は、陶あんが「ゆうはり」という名称で2019年夏に発売する予定だ(図1)。

図1 陶あんの「ゆうはり」
透光性のある清水焼を開発した。既存のバインダーを利用すると不良品が発生しやすかったため、セルロースナノファイバーを適用した。(写真:日経 xTECH)
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 焼き物は夏期に売り上げが落ちる傾向がある。そこで「夏場に使いたくなるような、容器が透ける、涼しげな焼き物」(高石氏)として透光性を備えた清水焼の開発を目指していた。ところが開発中、歩留まりが低いという課題にぶつかる。

 この課題を解決したのがCNFである。CNFの添加で歩留まりが高まる理由は、成形型(石こう型)から外れやすくなる(脱型性が良くなる)ためだ。清水焼は鋳込み成形で作る。鋳込み成形とは、焼き物の泥上の材料(スラリー)を成形型に流し込み、成形型に水分を吸収させて形を整え、その後高温で焼き固める手法だ。陶あんは、釉薬(ゆうやく)の原料の1種である長石を主原料に使って透光性を有する清水焼の開発を進めた。しかし開発品の主原料である長石は収縮量が小さく、成形後も成形型にすっぽりとはまったままになる。そのため、鋳込み成形後に成形品を石膏型から外しにくく、不良品を生みやすくしていた(図2)。

図2 不良品の発生
ここでは長石の代わりに、同様に乾燥で収縮しにくいファインセラミックス材料(アルミナ)で実験した。左下の実験ではアルミナが陶磁器より収縮していないのが分かる。型から外しにくく、不良品を生む要因になっていた。そこで複数のバインダーを比較し、TEMPO酸化CNFを選定したという。(写真:日経 xTECH)
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