近畿大学はマダイ稚魚の選別作業の一部にAI(人工知能)を導入し、稚魚を運ぶポンプの水量調節の自動化に成功した。これまでベテラン作業員がポンプに付きっ切りで水量を調節していたが、AIの導入で別の作業に集中できるようになった。

マダイ稚魚の選別の鍵を握るポンプ水量をAIで自動調節
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 豊田通商と共にシステム開発を手掛けた日本マイクロソフトが2019年2月15日、水量調節システムを2018年12月に本稼働したと発表した。開発過程では生き物相手の作業現場にAIを持ち込むための課題をいくつも乗り越えた。

 「生き物が相手でもAIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)を使って作業効率を高められた。この経験をきっかけに、さらなるAIの活用につなげたい」――。近畿大学の水産養殖種苗センター種苗事業部長で白浜事業場長代理を務める谷口直樹氏は、人手に頼っていた重労働をAIで代替した取り組みの成果をこう語る。

 近大は作業員が担っていた養殖現場におけるマダイ稚魚の選別作業において、AIやIoTの活用を進めている。第1段階として2018年12月、米マイクロソフト(Microsoft)の機械学習クラウドサービスである「Azure Machine Learning(ML) Studio」を使い、稚魚をくみ上げるポンプの水量を自動調節するシステムを本稼働させた。

 和歌山県白浜町にある近大の水産養殖種苗センターはマダイの稚魚を8~10センチメートルまで育て上げた後、毎年5~6月と12~1月に近大発ベンチャーのアーマリン近大を通じて養殖業者に販売している。同センターが出荷するマダイ稚魚は年間約1200万尾に上り、国内シェアは約24%だ。繁忙期は1日最大25万尾を出荷する。生育不良の稚魚を出荷すれば顧客からクレームが入りかねず、選別作業は重要だ。

 現在は生育不良の稚魚を作業員が目視で選別している。谷口部長によると「選別スキルを習得するのに数年はかかる」。特殊な作業故に、労働力の確保や技術の継承が課題だった。

 稚魚を選別する作業は、海面に浮かぶ作業用のいかだの上で実施する。まず、いけすの稚魚を海水ごとポンプでくみ上げ、稚魚をベルトコンベヤーに乗せる。稚魚がコンベヤー上を流れる間に作業員が生育不良の稚魚を取り除く。コンベヤーは4台あり、1台当たり3人がかりで作業する。コンベヤー上を流れる稚魚は「1秒間に約3尾」(谷口部長)という。

 稚魚を正しく選別するにはポンプの水量調節が欠かせない。選別担当者3人の作業量を超えないよう、コンベヤーに流す稚魚の数を一定に保つ必要があるからだ。ポンプの水量調節は作業員の中でもベテランが担っていた。その日の選別担当者のスキルや疲れ具合も加味して適切な量の稚魚を送り込むには、高い技術と経験が求められる。谷口部長は「10数人いる作業担当者のうち、ポンプの水量を適切に調節できるのは1人だけで、私も手伝う場合がある」と語る。

 常に適切な数の稚魚をコンベヤーに流すため、選別作業中はベテラン作業員1人が付きっ切りでポンプの水量を調節する。「休憩を除いて1日約6時間、調節用のダイヤル式コントローラーを握って神経をすり減らす作業」(谷口部長)という。

 同氏はAIを使ってポンプの水量調節を自動化できないかと考えた。ベテラン作業員の手が空けば「各顧客に合わせて出荷用のいけすを造る段取りをしたり、網の修理をしたりするなど別の重要な作業を担える」(同氏)。結果的に全体の作業効率向上や、技術継承の課題払拭につながる。

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