仮想通貨のマイニング(採掘)をする「Coinhive(コインハイブ)」をWebサイトに設置したとして、サイト運営者であるWebデザイナーの男性が刑法の不正指令電磁的記録保管罪(コンピュータ・ウイルスに関する罪)に問われた裁判が横浜地方裁判所(本間敏広裁判長)で開かれ、2019年2月18日に結審した。

 コインハイブはWebサイト閲覧者のPCやスマートフォンなどのCPU処理能力を利用してマイニングを実行させるプログラムである。判決が有罪であっても無罪であっても、IT業界や警察関係者らに大きな影響を与えそうな裁判であり、裁判には学生や技術者と見られる傍聴者が多く集まり、開廷1時間前から列を作ったほどだった。

横浜地方裁判所
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 起訴状などによると、男性はWebサイトの閲覧者の同意を得ずに仮想通貨「Monero(モネロ)」の取引履歴の承認作業などを実行させるマイニングの報酬を取得する目的で、正当な理由がないにもかかわらず2017年10月30日から11月8日まで不正な指令を与える電磁的記録を保管したというものだ。

 男性は2018年3月末に自ら運営するWebサイトにコインハイブを設置したとして同罪で横浜簡易裁判所から罰金10万円の略式命令を受けた。しかし命令を不服として正式裁判を請求して起訴された。

 公判ではコインハイブが通常の利用方法などに照らしてサイト閲覧者の意図に反して動いていたものかどうか、不正な指令を与えるものかどうかなどが争点となった。

 警察の摘発に対して情報セキュリティーに詳しい一部の専門家からは、コインハイブの設置が罪に問えるのかどうかの異論が出ている。閲覧者の意図しない表示をして拒否できない既存のWeb広告と比べて、違いが乏しいのがその理由だ。

 公判で弁護側は「Web広告や法務省のサイトなどにも閲覧者の承諾なくJavaScriptが埋め込まれ、サイト閲覧者のPCやスマートフォンなどのCPU処理能力を利用して表示している。男性はサイト閲覧者のCPUに負担を抑える設定をしており、PCなどの破壊や情報を勝手に抜き出すものでもない」と指摘した。

 一方で、検察側は「閲覧者が気付かないうちにCPU全体として20%程度が使用され、CPUの挙動が遅くなったり消費電力が7ワットから17ワットに上昇したりするなど、閲覧者は一方的に負担を強いられた。閲覧者がマイニングを了解するとは常識に照らして到底考えられず閲覧者の意図に反したことは明らかだ」と述べ、罰金10万円を求刑した。

 コインハイブを巡っては警察が2018年6月までに一斉摘発に乗り出した。国家公安委員会が2018年6月14日に開催した議事の概要によると、仮想通貨の不正採掘について犯罪の一斉集中取り締まりを実施したと説明している。

 それによると宮城県警察など10県警察が2018年6月13日までに一斉集中取り締まりをした。委員からは「各県警察の活動を高く評価したい」「サイト上の広告と同様だという報道もあるが、このプログラムを利用した不正採掘は明らかに犯罪だと思う」といった発言があったという。

 さらに委員から「広告と仕組みが同じでどこが問題なのかと主張する人がいるとすれば、その違いが分かるように、閲覧者の認識、選択肢、パソコン端末への支障、社会的相当性などの点につき比較して丁寧に説明することで理解が得られる」などと一般向けの広報に力を入れるよう求める声が上がったとしている。

 実際に警察庁は2018年6月14日、「サイバー犯罪対策プロジェクト」のホームページに、自らが運営するウェブサイトであっても「マイニングツールを設置していることを閲覧者に明示せずに同ツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります」と警告を掲載した。

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