トヨタ自動車が新しく開発したハイブリッド技術で、ディーゼルエンジン車の牙城を崩しにかかる。ハイブリッドの弱点とされる動力性能を大きく高めた。コスト面でも、優位に立つと見込む。燃費性能は、かねて優れる。パワートレーンの基本要素の全てで、ハイブリッドがディーゼルを上回る。

 2019年初頭に欧州で発売し始めた新型「カローラ」シリーズに、新しいハイブリッド技術を採用した。排気量2.0Lの新型ガソリンエンジンとモーターや電池、動力分割機構を組み合わせたもので、最高出力が135kW程度に達する。「プリウス」搭載の現行主力機(同90kW)に比べて約1.5倍と、大幅に高めた。「燃費性能は高いが、動力性能で劣る」と皮肉られてきたハイブリッドの常識を覆す。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
左がトヨタのハイブリッドの中核である動力分割機構。エンジンとモーターのトルクを車軸に伝える。右が新開発の排気量2.0Lガソリンエンジン。最高熱効率が41%と世界最高値に達する。(出所:トヨタ)

 トヨタが新ハイブリッドの開発でディーゼルを強く意識したのは、コストで同等以下にするめどが立ってきたからだ。パワートレーンの基本指標は、燃費性能と動力性能とコストの3つ。新ハイブリッドはディーゼルに対して、基本指標の全てで上回る可能性がある。

 パワートレーンの長い歴史で見ると“新参者”のハイブリッドが、既存技術の代表格であるディーゼルを切り崩す好機到来である。悲願だった「ハイブリッド車(HEV)でディーゼル車に勝つ」(トヨタのパワートレーンカンパニー幹部)ことが、絵空事ではなくなった。

 市場も後押しする。ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)の排ガス不正問題以降、欧州におけるディーゼル車の販売不振は深刻だ。直近では下げ止まったと見る向きもあるが、2018年はEU(欧州連合)加盟国の全てで前年の販売を下回ったもようである。代わりに、HEVの販売が増えている。

“敵失”に乗じるハイブリッド

 ハイブリッドのコストは、一般に高くなる。ガソリンエンジンに加えて、モーターや電池、インバーターなどの高価な部品が多く要るためである。

 それにもかかわらず、「(コストでディーゼルに)負けていないし、勝るのではないか」(トヨタのハイブリッド技術者)との自信をのぞかせるのは、長年の「カイゼン」に加えて、“敵失”が大きい。ディーゼルのコストが上がり続けていることだ。

 排ガス規制が厳しくなる一方で、「対策コストが莫大」(国内自動車メーカーのエンジン技術幹部)になっている。欧州で2017年に始まった、実走行中における排ガス規制「RDE(Real Driving Emissions)」が特に厳しい。

[画像のクリックで拡大表示]
ディーゼル車の排ガス後処理装置。尿素SCRに加えて、酸化触媒などが必要になる。(出所:VW)

 規制達成には、大型の尿素SCR(選択触媒還元)などの高価な排ガス後処理装置が必要とされる。車両質量によるが、後処理装置だけで5万~10万円のコスト増になるとの推測がある。安価なガソリンエンジンを造れる水準である。

 一方でトヨタは、ハイブリッド機構の低コスト化を長年かけて進めてきた。「トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)」と呼ぶ基本構成を、20年以上にわたって使い続けたことで実現する。

 「THSを使い倒す」(トヨタのハイブリッド技術者)ことで、地道に原価を下げてきた。換言すると、長きにわたって他社技術と競えるほどにTHSには先見性があった。

 1997年に初代プリウスを発売した頃に比べて、エンジンを除いたハイブリッド部品のコストは1/5以下になったとみられる。いよいよ、コストが上がり続けるディーゼルに勝る水準にこぎ着けた。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら