対向車や歩行者などがまぶしくないように配光を制御する、「ADB(Adaptive Driving Beam)」機能を備えたヘッドランプの開発が加速している。どうコストを抑え、きめ細かく制御できるようにするか。ヘッドランプ大手のフランス・ヴァレオ(Valeo)や小糸製作所が新方式を提案した。

 開発競争のきっかけをつくったのはドイツのダイムラー(Daimler)だ。同社は2018年、「DIGITAL LIGHT」と名付けた新型ヘッドランプを、超高級車「メルセデス・マイバッハSクラス」に初採用した。車両や歩行者の顔に光を照射しないようにしつつ、路上に工事中や雪などのアイコンを表示して運転者に注意を促す“芸達者”なシステムである。

 対向車や先行車、歩行者の顔だけでなく、標識に強い光を照射しないようにして反射光で運転者の視認性を確保した(図1)。路面に雪の結晶を模したアイコンや先行車との衝突の危険性を知らせるアイコンなどを投影して運転者に注意を促す。進む方向を路上に矢印で示し、歩行者や周囲の人に安心感を与えることも可能だ。

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図1 Daimlerの「DIGITAL LIGHT」。歩行者の顔に照射しないように配光制御した。(出所:Daimler)

コストがかかるDMD

 “芸達者”なヘッドランプの肝となる技術が、多数のマイクロミラーの向きをMEMSによって変えるDMD(Digital Micromirror Device)素子である。メルセデス・マイバッハSクラスが採用したDMDは、130万ピクセルのマイクロミラーを備え、照射箇所をより柔軟に設定できるようにした。

 ただし、DMDは「コストが非常に高く、高級車でないと採用が難しい」(ある日系自動車メーカーの技術者)という課題がある。配光制御できるヘッドランプは安全性の向上に大きく寄与するため、自動車メーカー各社は「普及価格帯の量産車に採用できるコスト水準の技術を強く求めている」(同技術者)状況だ。

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