既存ビジネスの慣習にとらわれず、新しい発想で製品やサービスを開発できるか――。今、多くの大企業がこうした課題に直面している。大手IT企業の富士通もその1社。主力のSI事業における次の一手を模索している。

 富士通の新しい取り組みを象徴する製品が登場した。同社が2019年1月21日に販売を開始した、製造業向けのデータ分析ソフト「ODMAデータ分析ナビゲーション for ものづくり(DA Navi)」だ。

 DA Naviは工場設備の故障予知と、製品の品質予測という2つの機能に特化したデータ分析ソフト。生産現場の担当者であっても、プロのデータサイエンティストと同じ手順で分析できるようにしたことが特徴だ。2種類の分析に機能を絞ったことで、集めるべきデータの種類や不足データの補完手法、使用する分析手法などを限定できたため、専門家と同等の分析結果を出せるという。

「ODMAデータ分析ナビゲーション for ものづくり」の画面、インターフェースをExcelにし、簡単に操作できるようにしている。価格は500万円(税別)
(出所:富士通)
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 実はDA Naviは、販売開始のプレスリリースが出ることもなく、ひっそりと出荷を開始したソフトである。それでも、DA Naviは2つの理由で注目に値する。1つは開発プロセス。もう1つは製品の位置付けだ。

ユーザーを観察し、開発に着手

 DA Naviを開発したのはデジタルソリューション事業本部。人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などの最新技術を活用して、新しいソフトやサービスを作り出すための部門である。富士通のデジタルビジネスを担う「デジタルソリューションサービスビジネスグループ」の中にある事業本部で、既存ビジネスにとらわれない製品開発が求められている。

 こうした背景のもと、DA Naviの開発プロセスには、デザイン思考やリーンスタートアップの考え方を取り入れている。製造業の既存顧客の工場に行き、現場担当者の仕事の仕方を観察したり、ヒアリングしたりすることで、潜在的な課題を発見。その課題を解決するソフトのプロトタイプを作った。プロトタイプを複数のユーザーに開示して改良すべきポイントをさらに聞き出し、それらを反映して製品化した。

 「複数の製造業の生産現場で担当者に話を聞き、簡単に操作できるツールがあるならば自分でデータ分析をしたいという潜在的な需要が分かった。それを満たす製品を作れば新しい市場を作り出せると確信し、製品を開発することにした」。開発チームを主導した大山広行デジタルソリューション事業本部イノベーティブソリューション事業部IoT/AIソリューション部部長はこう言う。

富士通の大山広行デジタルソリューション事業本部イノベーティブソリューション事業部IoT/AIソリューション部部長

 今回、大山部長のチームが採用した開発プロセスは、まさに最近のITベンチャーのやり方だ。しかし、国内の大手SIerの業務ソフト開発としては珍しい。一般に、国内の大手SIerは過去のSI案件で構築したシステムの一部を横展開する形で業務ソフトを開発することが多いからだ。

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