建築用免振・制振オイルダンパーで新たな品質データを偽装し、赤字転落したKYB。4度にわたる完成検査不正が発覚した日産自動車。電池や自動車部品などの材料で品質データを偽装し、延べ2329社に出荷した日立化成…。一連の品質不正問題で、次々に新たな不正が発覚して深刻な事態を迎えている企業が出てきた。こうした企業ではコンプライアンス教育を強化しているが、その効果がないことを証明してしまっている。何が問題でどのような手を打てばよいのか。ものづくりの現場に詳しい経営コンサルタントであるジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏に聞いた。

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ジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏

 日本企業の不正が収束を見せない。2017年に発覚した品質データ偽装は、2018年には日立化成やKYB、クボタ、三菱電機の子会社トーカン(本社千葉県松戸市)へと拡大の一途をたどった。完成検査不正は日産自動車とSUBARUが何度も繰り返し、スズキやマツダ、ヤマハ発動機も排出ガス測定で不正を行っていたことが発覚した。

 日本企業のコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(企業統治)が深刻な危機にさらされている。不正を起こした企業は例外なく、コンプライアンスやガバナンスの再教育を改善策として打ち出す。だが、果たしてそれだけで不正はなくなるのだろうか。その答えが「ノー」であることは、不正を繰り返している企業の存在が雄弁に語っているのではないか。

 コンプライアンスやガバナンスを強化するのは、不正の責任が社員個人の倫理観にあると考えているからだろう。だが、ジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏は、かつて工場マネージャーを務めた経験と、経営コンサルタントとして現在多くの工場を指導している知見から、日本企業で不正が続く大きな理由は、「個人の倫理観というよりも、むしろ経営者や管理者の『言行不一致』にある」という。

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ゴム製品の品質データ偽装で謝罪するトーカン社長の松岡達雄氏(中央)ら
(写真:尾関 裕士)

コンプライアンスは守るべきだが、私は例外だ

 言行不一致とは、従業員に指示を与える立場にある経営者や管理者の矛盾した姿勢や行動のことだ。例えば、口では「品質第一」と言いながら、品質問題が発覚しても「それでも、納期は死守せよ」と口走ってしまう管理者。これは言行不一致の典型例だ。

 必要な検査の一部を実施せず、未実施の検査項目に架空のデータを入力する。規定とは異なる方法で作業を実施し、つじつま合わせのために結果を細工する。試験などを全く実施していないのに、架空のデータを用いて実施を装う…。

 あらゆる日本企業が「品質第一」を掲げている。にもかかわらず、出荷納期を死守するために、こうしたやってはならない品質不正に現場が手を染める。この背景を探ると、経営者や管理者の言行不一致が見つかる。なぜなら、初めから不正を働こうとする現場の従業員はいないからだ。

 「安全第一」と言いながら、従業員の安全を確保するために必要な活動に積極的に取り組まずに発生した労働災害の問題も、言行不一致の例である。例えば、設備で安全装置を使わなければならないのに、安全装置を外して作業の時短を図って納期を守るように無言の圧力をかけることだ。

 さらに言えば、従業員に対して「コンプライアンス第一」と言いながら、企業トップや幹部社員、そして管理者が守るべきことを守らずに、コンプライアンスに反する行動をとることも言行不一致の例だ。

 目下、日産自動車の前代表取締役会長のカルロス・ゴーン氏が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と特別背任の疑いで逮捕・拘留されている。かつて危機に陥った同社にコストカットやリストラの“大ナタ”を振るって再生させたことへの正当な対価以外に、従業員に見えない所で報酬のごまかしや会社の資金の不正流用を本当に行っていたのであれば、悪質な言行不一致と言わざるを得ないだろう。

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2018年12月26日現在、特別背任の疑いで逮捕・拘留中のゴーン氏
(写真:日産自動車)

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