音の信号処理に強みを持つベンチャー企業のエヴィクサーとみずほ情報総研、リコーの3社は、スタジアムなど多数の人が集まる施設で使う緊急避難システムの実証実験を2018年11月13日に味の素スタジアム(東京・調布市)で実施した(図1)。地震などの災害発生時に、緊急放送の音声とともに、音を利用した通信技術「音響通信」によって、施設内にいる人々のスマートフォン(スマホ)に情報を送信して避難行動を円滑にする。

 既存の緊急放送設備をそのまま利用できるため、導入コストを抑えられる。2019年のラグビーワールドカップや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの導入を見据える。

図1 実証実験の様子
スマートフォンに配信された情報を確認しながら避難する人々。
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 スタジアムのような数万人が集まる施設では、災害などの緊急時には、円滑な避難行動が求められる。しかし現在、送電が停止するような災害が発生した場合、非常用電源を利用した緊急放送くらいしか施設内の人々に避難情報を伝達する手段はなかった。加えて、緊急放送で対応する言語は多くとも日本語と英語の2カ国語が限界。そのほかの言語を母国語とする外国人や、聴覚障害者に情報を提供することは難しかった。さらに、スマホを利用する場合も、災害時は通信にアクセスの集中が起こるため、LTEや公衆無線LAN経由で情報を提供すると確実性に問題が残る。

 そこで今回採用したのが、音響通信と呼ばれる音を利用した通信技術である。音にIDなどの情報を載せて送信し、スマホのマイクで受信する。千葉ロッテマリーンズは2018年シーズンに、試合を盛り上げるための演出として試合後のイベントで、観客が掲げるスマホの画面の色を一斉に変える演出を披露している(関連記事:音でスマホ操り光の演出 「千葉マリーンズ流」スマートスタジアム)。このイベントで観客のスマホを制御した技術が音響通信である。この演出では、人が聞こえない周波数帯域の音を利用して観客のスマホを制御した。

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