「リーチサイト規制の法制化や、著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化の検討を進め、…」(2018年10月30日、検討会議の座長検討状況報告より)

 2018年6月から10月まで海賊版サイト対策を議論した有識者会議「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」において、サイトへのアクセスを遮断するブロッキング法制化の是非は意見がまとまらなかった。その一方、著作権を侵害するコンテンツへのリンクを載せた「リーチサイト」への法規制と、著作権を侵害する静止画や電子コミックのダウンロード違法化を検討する方針については、目立った異論は出なかった。

 これを受け、文化庁は2019年通常国会への著作権法改正案の提出を目指し、法案作成の検討に入った。

 リーチサイト規制と静止画ダウンロード違法化は、ここ数年コンテンツ業界が政府に検討を要請していた。特に静止画ダウンロード違法化は、コミックを販売する出版社の悲願でもあった。映像や音楽については「著作権侵害コンテンツである事実を知ったうえでダウンロードする行為」が違法である一方、電子コミックなど静止画はその範囲に含まれていなかったためだ。

 政府の有識者会議などで2つの規制がたびたび議論の俎上にのぼったが、国内ネット企業を中心に「一般ユーザーへの影響が大きい」「乱用される恐れがある」などの反対があり、法改正に至らなかった。

 だが2017年から2018年にかけて「フリーブックス」「はるか夢の址」「漫画村」など、電子コミックの大規模海賊版サイトが相次ぎ登場。検討会議は海賊版総合対策の一環として、広告出稿の抑制やフィルタリング強化などと並び、リーチサイト規制と静止画ダウンロード違法化を検討する方針についておおむね合意を得た。

 なぜ出版社は静止画ダウンロード違法化を求めていたのか。今後、海賊版サイトへどのような対策を講じるのか。講談社の乾智之広報室長に聞いた。

海賊版サイトの対策を議論する有識者会議「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」は、サイトブロッキング法制化を巡って意見が割れた。講談社はブロッキングについてどのようなスタンスか。

講談社の乾智之広報室長
[画像のクリックで拡大表示]

 ブロッキングも選択肢の1つとしてあり得ると考えている。ただ大前提として、「通信の秘密」や「検閲の禁止」などを規定した憲法第21条に抵触しないとの解釈が成立するなら、の話だ。

 この半年間の議論で、専門家の多くが「ブロッキング法制化は憲法に触れるのでは」と声を上げ、世論もそれを支持した。そんな中、ブロッキング法制化の推進が最優先事項になることはあり得ない。

 講談社にとって優先順位の1、2位はリーチサイト規制と静止画ダウンロード違法化だ。その次に、新たな法整備を伴わないフィルタリングや広告出稿抑制、著作権の普及啓発などがある。

静止画ダウンロード違法化については、検討会議でも「国民の生活に大きく関わるもの」として慎重に検討するよう求める声があった。

 私が知る限り、映像や音楽についてアップロードを伴わないダウンロードのみの行為で検挙に至ったケースはないはずだ。個人の犯罪として逮捕が頻繁に報じられているのは、PtoPソフトを利用して著作権侵害コンテンツをアップロードしたケースだ。

 出版業界として望むのは、侵害コンテンツを気軽にダウンロードする行為に対する抑止効果だ。「海賊版サイトの閲覧は危ない行為」ということが利用者に伝わることが何より重要だ。

静止画ダウンロード違法化について、漫画村のようにブラウザーで閲覧できるオンラインリーディング(ストリーミング)型の海賊版サイトには効果がないとの意見もある。

 2018年前半はストリーミング型の「漫画村」が突出して目立ったが、現時点で存在を確認されていると言われる200以上の海賊版サイトのうち、半数以上はダウンロード型とみられている。

 さらにストリーミング型のサイトでも、閲覧している中・高・大学生が(オフラインでも閲覧できるよう)ダウンロードアプリを使っている例が多く見受けられる。ストリーミング型サイトであっても、実際にユーザーがストリーミング方式で閲覧しているとは言い切れない。

 ただ正直にいえば、「ストリーミングだから」という理由で「海賊版サイトの利用は違法ではない」と言われると、コンテンツを作る側としてはやりきれない。法律の具体的な文言は専門家に委ねるが、「ストリーミングなので適法」のような逃げ道はふさいで欲しい。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は登録月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら