「情報銀行」の構想は教育分野から広がる――。そんな動きが出てきた。東京大学と埼玉県は大学受験生らが高校在学中の課外活動などのデータを出願時に活用できる「eポートフォリオ(電子学習記録システム)」の新たな仕組みを考案した。大学受験用の情報銀行と呼べるもので、2018年度内の実証実験を経て、2019年度に実運用を開始する計画だ。

 eポートフォリオは文部科学省が2020年度以降の大学入試改革で導入するシステムだ。生徒が自らの課外活動や資格・検定などの実績を電子データとして蓄積して、教師が閲覧して指導に役立てたり、生徒が大学入試の出願にWebでデータを提出したりする。大学はeポートフォリオのデータと入試成績で合否を決められるようにする。

 eポートフォリオを実現するには、教師が生徒の成績や出欠、健康診断結果、指導要録などを管理する「校務系システム」と連携してデータを利用できるようにする必要がある。さらに、生徒が自らデータを管理しながら大学入試などの出願の際にデータを提出できるようにしなければならない。

 しかし文科省が2017年10月に公表した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は、教師や生徒が利用する「学習系ネットワーク」と、教師だけが使う「校務系ネットワーク」の通信経路などを分離して、生徒らが校務系システムにアクセスできないようにセキュリティ対策の強化を求めている。eポートフォリオは生徒がアクセスできる学習系システムの一種だが、校務系ネットワークと分離しなければならない。

「PLR」と呼ぶ独自方式でデータ共有

 そこで東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターの橋田浩一教授は、個人がデータを集めて必要な相手とデータを共有できるPLR(Personal Life Repository)という独自に考案した方法を基に、eポートフォリオを実現する仕組みを考案した。

 PLRはユーザーがスマートフォンなどを使って「Google Drive」や「iCloud Drive」などの既存のクラウドストレージ(PLRクラウド)を経由し、ユーザーの同意の下で必要な相手とデータを共有する。

 ユーザーのデータや通信経路は暗号化してスマホやクラウドストレージに保存し、クラウド事業者にも内容が分からないように管理する。明示的な本人同意がなければデータにアクセスできない。

 eポートフォリオをPLRの仕組みで実装すれば、校務系システムとeポートフォリオの連携はクラウド経由で実現できる。教師が校務系システムから成績表や成績証明書などの生徒が見てもよいデータを抽出してクラウドに保存すると、生徒は校務系システムにアクセスしなくてもデータを利用できる。

図 PLRによるeポートフォリオの運用
(出所:橋田浩一東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター教授)
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