三菱ケミカルホールディングス(HD)がデジタル変革を急ピッチで進めている。最大の特徴は、デジタル化の方法論を独自に構築していることだ。人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といった先進技術を活用して既存ビジネスの最適化を進めながら、同時にその方法論まで自社内で策定している。象徴といえるのが、デジタル技術の適応例を13個のパターンに分類した「Digital PlayBook」である。同社のデジタル専任組織である「デジタルトランスフォーメーショングループ」が2018年9月にまとめ上げた。

 Digital PlayBookに記載した13個のパターンには、以下のようなものがある。ソーシャルメディアや様々なデジタルソースから得た知見を新製品開発やマーケティング活動に生かす「Digital Listening」、付加価値のあるデータをサービスとして顧客に提供する「Digitally Enhanced Service」、既存の製品にデジタル技術を掛け合わせて付加価値を高める「Smart Products」などだ。

 Digital PlayBookは社内外のデジタル事例をコンサルティング会社の協力を得ながら調査して、そのエッセンスを抽出する形でまとめたもの。Digital PlayBookには各パターンの解説と共に他社の事例も掲載しており、全80ページにもなる。

 13個のパターンを見ていくと、いずれもどこかで見聞きしたものばかりに思える。ポイントは「これらをいかに組み合わせるかだ。13個のパターンは、いわばレゴブロック。自由な発想で組み合わせることでデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルを考案しやすくなる」と岩野和生先端技術・事業開発室デジタルトランスフォーメーショングループ執行役員Chief Digital Officer(CDO、最高デジタル責任者)は話す。レゴブロックは有名なデンマーク・レゴ(Lego)グループの玩具である。

三菱ケミカルホールディングスの岩野和生先端技術・事業開発室デジタルトランスフォーメーショングループ執行役員Chief Digital Officer
[画像のクリックで拡大表示]

 実際には、最初にデジタル専任組織がいくつかのパターンを組み合わせることで、新しいビジネスモデルの素案を策定。事業部門に提案する。すると事業部門から「この部分は別のパターンを組み合わせたほうがいい」といったアイデアが出てきやすいという。

 ビジネスモデルの変革は、デジタル専任組織からの押しつけでは事業部門の反発を受けるだけ。とはいえ、事業部門に新ビジネスのアイデアを出してほしいと言ってもなかなか出てくるものではない。そこでビジネスモデルの要素を13個のパターンに分解し、組み合わせ方を事業部門と一緒になって考えるようにしたわけだ。

 Digital PlayBookを基に、ある事業部門とデジタル専任組織が議論したところ、「以前よりも議論が活性化した」(岩野CDO)。結果として11個の新ビジネスのアイデアが出た。このうち事業にインパクトがあり、実現可能性が高いものから順に本格的に形にしていく計画である。

 デジタル変革に取り組む企業は増えているが、デジタル化の専任組織が事業部門を巻き込むのに苦労するケースが少なくない。三菱ケミカルHDのDigital PlayBookは、事業部門に対して意識変革をもたらす仕掛けの1つ。こうした取り組みは国内では珍しい。

 Digital PlayBookの策定は、三菱ケミカルHDが進めるデジタル戦略の一部に過ぎない。同社はほかにどんなやり方でデジタル戦略を進めているのか。詳しく見てみよう。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら