数カ月間現場を離れ、デジタル時代に向けた全く新しいスキルを身につける――。こんな研修に今、大手ITベンダーが相次ぎ社員を送り込んでいる。狙いはデジタル時代に向けたスキルを身につけたITエンジニアの育成だ。

 富士通は2018年5月、米ピボタル(Pivotal)とアジャイル人材の育成で協業した。「世界標準の考え方や技術を学ぶ」(富士通の担当者)として、米ピボタルの人材育成コンサルティングの拠点であるPivotal Labsに自社のITエンジニアを派遣し、アジャイル開発のノウハウの習得を進めている。Pivotal Labsは米グーグル(Google)や米イーベイ(eBay)などのITエンジニアを教育供したことでも有名だ。

 NTTデータも2018年に入って本格的にブートキャンプ形式と呼ばれる研修を提供するコードクリサリスに、自社のITエンジニアを派遣し始めた。コードクリサリスでは3カ月間、平日の朝9時から午後6時まで東京・六本木にある教室に通う。JavaScriptやOSS(オープンソース・ソフトウエア)を使って、フロントエンドからサーバー側までWeb開発を担えるフルスタックエンジニアの育成を目指す。授業は全て英語だ。

 「派遣の狙いの1つは、安定志向だったり、40歳~50歳代になってセカンドキャリアに迷っていたりする中堅メンバーのスキル再構築」とNTTデータの木村紘太郎 技術革新統括本部 システム技術本部 生産技術部 ソフトウェア工学推進センタ 部長は話す。

 「これからのデジタル時代には、次々と登場する新しい技術を使いこなしながら、新サービスを開発していけるITエンジニアが求められる。コードクリサリスに期待するのは、特定の技術の習得ではない。自分の知らない技術であってもすぐに評価したり、多様なメンバーが参加するプロジェクトで、英語を使って開発できたりするスキルだ」と木村部長は強調する。

学ぶのは言語ではなく、開発力

 Pivotal Labsとコードクリサリスに共通するのは、特定の製品や技術を身につけることを目的とするのではなく、開発や発想の方法を学ぶことを目的としている点だ。JavaやJavaScriptを中心にWeb開発の技術の習得を目指すものの、重きを置いているのはアジャイル開発などの手法や発想を身につけることだ。

 加えて研修方法も、従来のプログラミング言語や製品関連の技術研修とは異なる。講師が教える座学やオンライン講座ではなく、ペアプログラミングで実際のシステムを開発するプロジェクト形式が基本だ。また通学する方式ではあるものの、研修期間は通常の業務を完全に離れて研修に没頭することも特徴の1つである。

 Pivotal Labsの場合、研修の目的は「『実際に作る力(enablement)』を身につけることだ」とPivotal Labs Tokyoディレクターのザック・ブラウン氏は説明する。Pivotal Labsでは5人程度のチーム単位で研修を受ける。チームメンバーの構成はプロダクトマネージャー、デザイナーがそれぞれ1人、そしてITエンジニアが2~3人が基本だ。研修期間は3カ月単位である。

 参加するITエンジニアはシステム開発経験が必要で、プロダクトマネージャーやデザイナーは「コミュニケーション能力があれば、必ずしも各業務の経験がなくても受講できる」とブラウン氏は話す。

 研修のゴールは最終的に実用可能な成果物となるWebサービスやモバイルアプリを開発することだ。3カ月で終了しない場合は、半年、あるいは1年など受講期間を伸ばすケースもあるという。

 チームのメンバーは3カ月間、東京の六本木ヒルズにあるPivotal Labs Tokyoに通う。朝の集合時間やミーティングの長さ、昼食時間などの時間割が決まっており、「残業はない」(ブラウン氏)。

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