アサヒビールは業務の効率化を目的に、10年以上前に構築した営業支援システムの拡張に踏み切った。2018年7月に業務用商品の営業担当者500人に展開済みだ。オンプレミス(自社所有)環境のシステムを作り直すのではなく、米マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を併用し、5カ月20人月で開発した。

営業支援システムの従来の課題と拡張による効果
[画像のクリックで拡大表示]

 「既存システムをレガシー(遺産)ではなく、資産にしようとの考えで拡張を進めた」。ITを含む共通サービスを提供する子会社であるアサヒプロマネジメントの業務システム部主任で業務グループに所属する塙圭介氏はこう語る。アサヒビールはレガシーシステムを残しつつ、Azureを活用して機能を拡張する方式を採用した。

独立したシステムが業務の制約に

 同社の営業形態はスーパーやコンビニエンスストアなど家庭用商品を扱う量販店向けと、業務用商品を扱う業務用酒販店や飲食店向けに分かれる。AzureのPaaSで拡張したのは業務用商品を扱う営業組織の支援システムだ。2000年前半から機能別に順次手組みで構築し、2009年に約10種類のシステムを整備した。「それぞれが独立したシステムになっており、業務の制約になっていた」と塙氏は振り返る。

 従来のシステムは複数の課題があった。塙氏は「取引先の店名や電話番号を入力するために必要なシステムや書類を探すのに手間がかかった」と話す。同じ内容を重複して入力しなければならないケースもあった。「取引先の情報は顧客情報システムだけでなく、契約書を管理するシステムにも入力しないといけない。一方に入力ミスがあって、後で修正する場合も多かった」(同)。

 顧客情報の検索に時間がかかるのも悩みの種だった。自社の取引先以外も含め、リレーショナルデータベースに120万件の顧客情報を蓄積していた。「地域などでフィルタリングしないと結果が返ってこない。地域を絞り込んでも結果表示まで数秒~数十秒はかかった」(グループ内のIT企業であるアサヒビジネスソリューションズのソリューション本部開発統括部に所属する塩田弘毅氏)。

 2017年に業務効率化のためにiPhoneを導入したものの、営業支援システムを利用できない課題もあった。「社外での入力や検索はPCを持ち出さなければならず『iPhoneを使って外回りの隙間時間で利用したい』との要望が挙がっていた」(塙氏)という。

 これらの課題を解決するため2017年2月に、営業支援システム刷新の検討を始めた。当初はCRM(顧客関係管理)のクラウドサービスを利用する構想だった。「量販店向けに導入していたCRMクラウドを利用しようとしたが、業務用商品の営業で使うにはカスタマイズが必要だった。そもそも営業業務が標準化されておらず、業務をシステムに合わせるのも難しかった」と塙氏は打ち明ける。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら